

ベルリンの壁の崩壊以降、ここ20年、世界は自由化の方向に大きく進んできました。人種や経済だけでなく、文化やライフスタイルの多様性という観点から、アメリカはその象徴でした。半面、世界中のいろいろなところで格差が広がっていったことも事実です。
移民を受け入れ、国内の大手企業がグローバリゼーションの名のもとに生産拠点等を海外に移転したことにより、国内の雇用が減少したというのがトランプ氏の主張です。
Brexitは歴史的にはかなり古くから存在する論点だったようですが、今回の転換の1つになったのは独首相アンゲラ・メルケルによる移民受け入れの発言だったとも言われています。国ごと経済情勢が異なるにも関わらず、経済政策はEUの判断に基づいて行われる。そのような中で移民を受け入れるということを他国の首相が口にし、それをEU参加国として、一定程度の負担を強いられるところにイギリス国民の一部に大きな反発が生じたのかもしれません。
ギリシアの問題もEUの制度的な限界にもあるのかもしれません。通貨発行の統制を国が自律的にできないとことは、アベノミクスにより、部分的に息を吹き返しつつある日本経済とは異なる状況です。
私はこれらの動きは、あくまでこれまでの多様化・自由化の手法に未成熟な部分があり、その結果、生まれた不整合に修正をかけようとする反動だと思っています。何がしかの論理的な根拠があるわけではありませんが、いってみればこれは免疫反応のようなものであって、世界大戦前のような保護主義に極端に回帰するものではないと信じています。
なぜならば、長い目で歴史をみてば明らかなように、人間は生まれながらにして自由で気ままな生き物であり、一時的であれば可能ですが、統制的(抑圧的)なマネジメントを継続的に行うことは不可能だからです。
免疫活動が効果を発揮すれば、さらなる反動が近いうちにおき、結果として多様性を受け入れ、より深化した自由化の方向に戻っていくと信じています。当然、課題を是正した結果として、これまでとは異なる、より高度化した構造やビジネスモデルを踏まえた経済圏になると思いますが。そんな風に考えると、最近のフランス大統領選挙とその後の総選挙、これがどんなことになるのか非常に興味深いですね。
まとめると、行ったり戻ったりのプロセスではあるものの、結果としては多様性を受け入れるためにより高度な仕組みが整備され、その効果を享受する方向に長い目で見れば進むということです。