従来、白内障手術で使われる眼内レンズは、「単焦点眼内レンズ」といわれるものだった。これは、その名の通り、一つの距離に焦点を合わせた眼内レンズで、手術の前にどの距離に焦点を合わせたレンズを挿入するかを決めておく。手元の書類を見る機会が多いか、遠くの標識などを見ることが多いか、という患者のニーズに合わせていた。

 このため、レンズの焦点を遠方に合わせると近くを見るときには眼鏡が必要で、近くに焦点を合わせれば遠方を見るときにはやはり眼鏡が必要だった。

 こうした不便さを解消できるのが、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術(白内障に係るものに限る)」という先進医療で使われている「多焦点眼内レンズ」だ。このレンズでは、遠距離、近距離など2ヵ所にピントを合わせることができるのが最大のメリット。眼鏡やコンタクトレンズを使いたくないという人に向いている。ただし、強い乱視がある人や、緑内障による視野障害、加齢性黄斑変性症で視力が落ちている人には使えないことがある。

左)単焦点眼内レンズで見たときのイメージ、右)多焦点眼内レンズで見たときのイメージ(画像の拡大。画像提供:日本アルコン株式会社)

 また、「多焦点眼内レンズの場合、単焦点眼内レンズを使ったときのような良好なコントラストは得られないというデメリットもある。特に遠くの見え方はコントラストが落ちるので、患者さんの中には術前に思っていたよりも見え方がくっきりしない、ぼやける、見えにくい、と感じる人もいる。また、夜にヘッドライトなどの光がにじんだり、まぶしく感じる『グレア・ハロー現象』が起こることもある。ただし、術後グレア・ハローを強く感じた人も、2~3ヵ月経つと脳順応によって気にならなくなるケースがほとんどだ」とこれまでに約500人(1000眼)以上の多焦点眼内レンズの挿入術を行った宮島教授は説明する。