自動運転バブル崩壊の予感

基調講演は、トヨタ・リサーチインスティテュート(TRI)だったが、話題は自社で行う113億円の投資ファンド Photo by Kenji Momota

 ちなみに、今回の全体講演に自動車メーカーとして登壇したのはトヨタと日産のみ。ホンダが日本政府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を代表して講演した他は、トラックの縦列自動走行のパネルディスカッションでボルボが登場しただけ。コンチネンタル、ボッシュ、デルファイなど大手自動車部品メーカーの全体講演もゼロだった。これでは、米連邦政府の動きが見えないなか、自動運転の開発動向について積極的にはしゃべりたくない、と思われても仕方がない。

 もう1点付け加えると、自動車メーカー主導ではなく、いわゆるロボットタクシーのような公共交通に近いかたちの自動シャトルサービスが、2020年頃には世界各地で実用化されるという“青写真”がある。

 この分野では、グーグルからスピンアウトしたWaymo (ウェイモ)がある他、欧州では仏Navyaなどが各地で実証試験を行っている。だが、6月開催のITS EU会議での各種協議を見聞きし、またEU(欧州委員会)の担当者や欧州の自動運転シャトル事業関係者らと直接話してみたが、「現状での実証試験は、実施の各自治体の警察が個別に判断しており、EUとして総括的な法整備を行うのは、かなり先になる」という意見が多かった。

 こうした世界各地での“生の声”と接する中で、筆者が感じるのは、自動運転バブルの崩壊だ。

 自動運転、自動運転と、自動車産業界やメディアが大騒ぎし始めたのは、いまから4年前の2013年頃。その起点は、グーグルカーの量産計画に対する“噂”だった。

 そしていま、先行き不透明なトランプ政権の意思決定プロセスによって、自動運転という次世代の技術開発や、そこに対する投資がスローダウンしてしまう危険性がある。

 そうしたなかで、日本にとって最も大きな問題は、日系自動車メーカー関係者らが今回のシンポジウムの現場で実際に話していたような「元の鞘に収まるのだから、まあ、のんびりやろう」という、“心の隙間”ができてしまうことだ。

 その隙に、世界各地では水面下で、新たな動きが着々と進む。自動車産業界ではティア2(二次下請け)である半導体メーカーらのサプライチェーン改革。世界最大の自動車市場・中国では、燃料電池車の本格普及を想定し、その前段階としての電気自動車の普及政策と自動運転政策が融合する。

 日系自動車業界関係者におかれては、いまこそ、しっかりと、気を引き締めていただきたい。

追記:本稿作成後、米下院のエネルギー商業委員会が、自動運転の販売や使用を緩和する法案を可決した。こうした議会の動きについては、今回取材した現場でも、参加者らは米自動車大手メディアのAutomotive News等を通じて承知していた。それにもかかわらず、現場の空気感はトランプ政権による自動運転の今後について、不透明感が拭えていなかったのが大きな問題だ。

(ジャーナリスト 桃田健史)