話題を独占した買収劇

 インターネット検索最大手の米Googleは、通信機器大手のMotorola Mobility Holdings(以下モトローラ)を約125億ドルで買収することを、8月15日(米国時間)に発表した。

 買収価格は1株あたり40ドルで、8月12日終値時点のモトローラの株価に約63%のプレミアムを乗せたことになる。また今回は、Googleが従来M&Aでよく使っていた株式交換ではなく、現金で支払われる。モトローラ側の現金を考慮しなければ、今回の買収によって、彼らは手元にある現金及び短期金融資産の1/3強(6月末時点)を使う計算となる。

 先週の通信セクターは世界的にほぼこの話題で一色だった。夏の終わりは、バカンスを楽しむ資本家たちに営業をかける時期だけに、景気のいい大型案件は、投資銀行家にとっても格好のセールストークとなったことだろう。

 しかしこの買収には、腑に落ちない点がいくつかある。もちろんモトローラの売却は以前から話題になっていたし、Googleがその相手となることも違和感はない。それでも、改めて買収の効果を考えてみると、多額の現金を吐き出し、また多くのプレミアムを乗せるだけの意味があるのか、正直分かりにくい。

Googleによる大盤振る舞いの舞台裏

 今回の買収の目的についてまず指摘されるのは、モトローラが保有する17,000件以上(これに加えて7,500件以上が申請中)の無線通信分野の特許である。無線通信分野を牽引する主要なプレイヤーであり、半導体レイヤーも含めて高度な技術を有するモトローラは、同分野で多様な特許を保有している。

 確かにこのところ、スマートフォンを巡る世界的な知財訴訟合戦は、活発さを増している。Androidの成長に伴い、Google本体のみならず同端末のベンダーは、アップルをはじめとした競合からの訴訟に直面している。特にSamsungやhtcといった主要ベンダーは、豪州や欧州での販売差し止め訴訟の結果、同端末を販売できない事態となっている。