米国の金融政策への関心が一段と高まっています。今週末には、ジャクソンホールの有名なカンファレンスで、FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長の講演が予定されています。

 昨年はこの講演で「QE2(量的緩和政策第2弾)」を行うことが示唆されたので、あらためて注目が高まっているようです。

 さて、「QE3(量的緩和政策第3弾)」をやる、やらないとは別に、この8月に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)で、超低金利を2013年まで続けるとする、いわゆる「時間軸効果」が決められたため、市場金利が大きく上がるのは難しいとの見方が強くなっています。

 だから、米ドルも上がらないといった見方が強くなっているようですが、本当にそうなのでしょうか?

「時間軸効果で米金利が上がらない」は正しいのか?

 確かに、日銀が1999年に「時間軸効果」を採用した際には、市場金利の低位安定に一定の効果がありました。

 ところが、当時と最近では、市場金利を取り巻く状況はむしろ正反対ですらあるのです。

 日銀は1999年2月にゼロ金利を決定し、さらにその数ヵ月後には低金利を長期にわたって続けることを表明して、いわゆる「時間軸効果」を決めました。この決定は、当時、日本の長期金利(10年もの国債の金利)の低下および低位安定に一定の効果をもたらしました。

 こういった経緯もあって、FRBが「時間軸効果」を決めたことで、米国の長期金利は当面大きく上がらないとの見方が強くなっているようです。

 ただ、1999年当時、日銀のゼロ金利および「時間軸効果」で日本の長期金利が低下し、低位安定となったのは、そもそもその前に「異常な上がり過ぎ」となっていたことが主因だったと思います。

資料1

 

 上の「資料1」のように、1999年2月当時、日本の10年債利回りの90日移動平均線からのカイ離率はプラス80%を超えていました。つまり、「異常値」となっていたのです。

 その意味では、「時間軸効果」で金利が低下したというより、そもそも「異常な上がり過ぎ」となっていたため、それが修正されるきっかけとして「ゼロ金利や「時間軸効果」が効果的に作用したということでしょう。

最近の米金利は経験的に「異常な下がり過ぎ」となっていた

 ところで、この90日移動平均線からのカイ離率を見ると、最近の米国の10年債利回りのそれは、1999年当時の日本の10年債利回りとは正反対の状況にあります。

 下の「資料2」をご覧ください。米国の10年債利回りの90日移動平均線からのカイ離率は、最近、一時マイナス30%まで拡大し、経験的には「異常な下がり過ぎ」となっていたのです。

 その意味では、FRBの「時間軸効果」はむしろ、米国の長期金利の「異常な下がり過ぎ」の状況をさらに続けることになるかが試されているのだと思います。

資料2

 

 90日線移動平均線からのカイ離率で見ると、最近の米国の10年債利回りのそれは、2008年のそれに近いでしょう。

 2008年12月も、米国の10年債利回りの90日移動平均線からのカイ離率はマイナス30%前後に達し、「異常な下がり過ぎ」となっていたのです。

1999年の日本より2008年の米国に似ている米金利

 それでは、2008年12月の米国の10年債利回りは、その後どうなったのでしょうか?

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