ここで、1つひとつの障害について聞いてみました(ステップ3)。
私「『やる気にならない』っていう障害があるけど、どういう状態になったらうれしいのかな?」
ユウキ「やる気になる」
私「『いつも一緒に叱られる5人組と別れられない』っていう障害があるけど、どういう状態になったらうれしいのかな?」
ユウキ「5人組と付き合わなくてもすむ」
私「『朝起きられない』っていう障害があるけど、どういう状態になったらうれしいのかな?」
ユウキ「朝起きられるようになる」
私「『宿題が終わらない』っていう障害があるけど、どういう状態になったらうれしいのかな?」
ユウキ「期限を守って宿題ができる」
私「『追試になる』っていう障害があるけど、どういう状態になったらうれしいのかな?」
ユウキ「追試にならない科目ができる」
私「『有益な補習が受けられない』っていう障害があるけど、どういう状態になったらうれしいのかな?」
ユウキ「補習を受けると次のテスト勉強になる」
つまり、ユウキが目標を達成するためには、「やる気になる」「5人組と付き合わなくてもすむ」「朝起きられるようになる」「期限を守って宿題ができる」「追試にならない科目ができる」「補習を受けると次のテスト勉強になる」が達成できたらいいのです。
「バカ脱出」は難しそうな目標に見えました。しかし、それぞれの障害を乗り越えた状態、つまり中間目標に落とし込むと、何だかできそうな気がしてくることが多いものです。
次のステップ4では、この中間目標を取り組む順番に並べるのですが、ユウキは、すべて同時に取り組めると感じていました。そんな場合は、ステップ4は割愛できます。
そこで実際の会話では、中間目標の1つひとつについて質問を続け、図表1に示す表を一気に埋めていきました。
私「『やる気になる』ためには、どんなことをしたらいいかな?」
ユウキ「『やらなかったらどうなるの?』と自分に問いかけて考える。考えたことを『バカ脱出ノート』にまとめる」
私「『5人組と付き合わなくてもすむ』ためには、どんなことをしたらいいかな?」
ユウキ「『今日は用事がある』とか『今日は病院に行かないとならない』と言って断る」
私「『朝起きられるようになる』ためには、どんなことをしたらいいかな?」
ユウキ「薬が効かないとすれば何か理由があるはず。今飲んでいる薬の分量や体調を健康記録につけて、医者に相談する」
私「『追試にならない科目を作る』ためには、どんなことをしたらいいかな?」
ユウキ「何か1科目頑張って、どうやって勉強したらいいかを考える」
私「『補習を受けると次のテスト勉強になる』ためには、どんなことをしたらいいかな?」
ユウキ「どうせ7時までは帰れないから、早く補習課題を終わらせて、友だちに教えたり先生に質問したりする」
こうやって取るべき「行動」を並べてみると、1つひとつは、やろうと思えばできるように感じるのです。そもそも自分でできそうな行動でないと言葉として出てこないものなので、言葉に出たものはできるはずなのです。
これが、「これをやりなさい」と指示・命令する代わりに、質問をして考えてもらうことの力です。