子どもの考える力は大切、でもどうすれば考える力が伸びるのかわからない――。そんな悩みを抱える親御さんにお勧めしたい方法があります。それは、ビジネス書の世界的ベストセラー『ザ・ゴール』の著者、エリヤフ・ゴールドラット博士が開発した「3つの思考ツール」を使うこと。このツールは「5歳児にもわかりやすく、経営者が使えるほどに奥が深い」と高く評価されており、世界で800万人が活用するまでになっています。飛田基氏の新刊『考える力の育て方』の中から、今回は「アンビシャス・ターゲット・ツリー」と呼ばれる思考ツールの使い方をご紹介します。
夢を追い続けるか、
現実的になるか?
クラーク博士の「少年よ大志を抱け」という言葉に代表されるように、大人たちは、大きな夢を持つことを子どもに求めるものです。幼稚園や小学校でも「将来の夢」について作文を書かせたり、発表させたりします。
一方で、多くの子どもたちの夢は、年齢が大きくなるにつれて小さくなっていきます。
たとえば、将来レアル・マドリードで活躍するという夢を持ったサッカー好きの小学生。高校を卒業する頃には自分の実力レベルもわかり、「働きながら、地元の少年サッカーチームのコーチになりたい」という夢に変わっているかもしれません。
それは、現実的な選択です。そのほうが幸せになれる可能性が高いと考えての決断なのです。その決断を親が後押しする場合もあるでしょう。
つまり私たちは、子どもに夢を持ってほしいと願う半面、現実的であってほしいとも願っているのです。非現実的な夢に挑戦し、挫折した子どもの姿は見たくないからです。
それでは、「現実路線」こそが生きる道なのでしょうか?
夢はいつかあきらめなくてはならないのでしょうか?
夢がなければ、決して叶うこともありません。プロサッカー選手になりたいという夢を持つことなしに、プロサッカー選手になることはないはずです。そう考えると、大きな夢を持つことは重要です。
大きな夢は重要。現実的であることも重要。しかし、夢を実現している人はごくわずか。
その理由は多くの場合、失敗体験にあります。失敗をくり返すたびに「挑戦しても失敗する」というパターンが頭の中に刻み込まれていき、失敗しない程度の目標を設定するようになります。それでもうまくいかないと「何をやっても無理」という気持ちになる。そして最後には、夢など考えられなくなってしまうのです。
わが子には、こうした状態に陥ってほしくないですよね。そこで今回は、夢を実現するのに最適な思考ツールを紹介します。それが「アンビシャス・ターゲット・ツリー」です。
アンビシャス・ターゲット(ambitious target)とは「野心的な目標」という意味です。達成するのが困難な目標をどのように達成するか。それを考え、実行するために準備されたのが、この思考ツールです。
アンビシャス・ターゲット・ツリーを使うことにより、大きな目標をどう設定するか、その目標を達成するためにはどんな障害があるか、それらの障害をどう乗り越えていくか、が具体的につかめるようになります。そして、これから紹介する「5つのステップ」を実践することで、描いた夢を実現できるようになります。
目標を達成するための
「5つのステップ」
アンビシャス・ターゲット・ツリーを使った目標達成のステップは、次の5つです。
(1) 大きな目標を定め、具体的な言葉にする
(2) 目標の前に立ちはだかる障害をリストにする
(3) 障害を乗り越えた先の中間目標を決める
(4) 中間目標を取り組む順番に並べる
(5) 中間目標達成の具体的な行動を決める
ここでは、各ステップの使い方を実例を交えながら説明します。ご紹介するのは、プロの俳優を目指している男子高校生の話です。
この高校生は、学校ではダンスサークルに所属し、放課後は劇団に行き、演技の練習を毎日続けていました。俳優の卵である彼にとって、映画やテレビドラマで役をもらうための絶好のチャンスとなるのがオーディションです。しかし、採用は狭き門。そんな彼と、目標達成のステップにそって会話を進めました。