(1) 自由
(2) 自己実現
(3) 共同体=絆

 この3つの幸福の条件は、3つのインフラに対応しています。

(1) 金融資産
(2) 人的資本
(3) 社会資本

 これを「見える化」すると、次の図になります。この本でこれから述べることは、この単純な図にすべて示されています。

 人生を支える3つの資本=資産によって、幸福の条件である自由、自己実現、共同体=絆が決まります。そこにどのような家を建てるかは、一人ひとりが自らの価値観にもとづいて決めればいいことです。

人的資本と社会資本

 投資家は、自らの金融資本を金融市場に投資して(リスクを取って)富を獲得しています(そしてしばしば損失を被ります)。同様に、人的資本とは自らの労働力を労働市場に「投資」して給与や報酬という「富」を得ることで、社会資本とはまわりのひとたちとの関係性から「富」を得ることです。

 これらを比較すれば人的資本の方が金融資本との類似性が強いのですが、人的資本の活用、すなわち「仕事」から得られるものをすべて金銭に還元することはできません。それは現代社会において、仕事を通じた「自己実現」こそが幸福の条件になっているからです。

 社会資本にいたっては、共同体=絆から愛情や友情といった「富」を得ていることは誰でもわかりますが、それを市場価値=金銭に換算することは原理的に不可能です――「評価経済社会」の議論ではSNSなどインターネット上の影響力の数値化が試みられていますが、現実生活に適用するのは困難です。

 いずれも株式・債券、不動産のような“実体”があるわけではないので資産をリスト化できない一方、「富を生み出すちから」、すなわち資本の側面がきわめて重要なことは明らかです。これが「人的資産」「社会資産」ではなく「資本」を使う理由ですが、私たちが人的資本や社会資本を"投資"して「富」すなわち資産を手に入れているという構図は金融資産と変わりません。

 人生設計の目的はこの「資金調達」と「資産運用」の循環を最適化し、より効率的に大きな「富=幸福」を創造することなのです。

(作家 橘玲)