電車で座席のいちばん端に座れると密かな幸福を感じる、という人は少なくない。これは、無意識のうちに、電車で乗り合わせる他人と距離を取りたいと感じているからだ。
人間関係には、関係に応じた適切な距離というものがある。例えば、個人的関心のある人が、楽しい会話をするのに適した距離は45cm~1.2mと言われ、これはエドワード・T・ホールというアメリカの文化人類学者によって「個人的距離」と名付けられている。
では、そんな個人的距離に、面識のない他人以外で入ってきて欲しくない人は誰か?
そんなユニークな調査を江崎グリコが行ったところ、1位・上司(46%)、2位・隣人(23%)、3位・同僚(17%)、4位・父親(8%)、との結果が出た。半数近い人が、上司との間にもっとも距離を取りたいと思っているようだ(調査は20代~50代の就業者、男女824人が対象)。
距離を取りたい原因の多くは
「口臭」や加齢臭などの「体臭」
人間がその関係性や状況に応じて取りたい適切な距離について、前出のエドワード ・T・ホールは、家族や恋人に対しての愛や保護などの距離としてふさわしい密接距離(15~45cm)、相手の気持ちを理解しながら日常的な会話ができる個人的距離(45cm~1.2m)、デパートの応接係などが客と応対する距離として適切な社会的距離(1.2m~3.6m)、講演会の場合など、公衆との間としての距離である公衆距離(3.6m以上)の4つに分類した。
社会的なコミュニケーションとしてふさわしい個人的距離に上司を入れたくない、と思っていると言うことは、コミュニケーションを取るのを拒絶しているとも言える。これは上司としてはただならぬ問題だ。
距離を取りたい理由として挙げられたのは、「口臭がキツイ」、「加齢臭がひどい」という理由が多く、「気持ち悪い」、「いやらしい態度がみえみえ」といった精神的な理由を上回った。おじさん上司が、部下とフレンドリーな関係を築こうと思った場合、まずは口臭・加齢臭といったにおいを気につけるのが第一歩のようだ。
加齢臭が始まるのは40代から?
気にしすぎるのも問題
においに関しては、さらに興味深いデータが出ている。「家族や恋人といった異性以外で、先述の密接距離になることを許容できるのはどの年代か?」というアンケートも行われており、その結果、男女ともに40代以上に対しては、20代・30代よりも多くの人が「許容できない」、としていることが分かった。加齢臭が目立つのは40代から、と言うことだろうか。
一方で、距離が近づいたとき、相手に対して気になることは、先ほども挙げたように1位「口臭」(83.4%)、2位「体臭」(81.1%)となっているが、3位は「香水や制汗剤などのにおい」(43.6%)となっており、気にしすぎて香水や制汗剤などに頼ることも問題かもしれない。
体臭を気にする男性の1人として言わせてもらえれば、男たるもの、夏場に少し歩いて汗をかけば残念ながらすぐに汗の臭いにおいが立ちこめてしまう。汗の臭い対策である香水や制汗剤なども問題になるなら、企業には、上司と部下のコミュニケーションを保つための施策として、職場内に銭湯でも用意してほしいものだ。
(プレスラボ 梅田カズヒコ)