働き方改革に着手する企業が増えている。しかし、「人」に起因するストレスは増大していると思えてならない。その原因は、マネジメントの目的が、パフォーマンス向上ではなく、上司の言うことに従わせることに変質してしまっているからではないか。その問題を解消する方法がある。(モチベーションファクター株式会社代表取締役 山口博)

人に起因するストレスは
増大している

上司が根性論を捨てると部下のパフォーマンスが上がる理由「仕事なのだから、つべこべ言わずに、言われた通りにやって当たり前」――。こうしたスタンスを改めない限り、上司の存在自体が部下のストレッサーになる

 メンタル面で体調を崩して休務した社員を、周囲は気の毒そうな目で見る。その目には、ネガティブな色があるように思えてしまう。

 休務した社員に対して、人事部長時代の私に聞こえてきた周囲からの声は、「この程度のストレスに耐えられないのであれば、当社で勤務することは難しい」「みんな同じ環境で働いているのだから、ストレスに対応できる耐性を持たなければならない」「持って生まれた原因で、病気になられたのではないか」…という、休務した社員に非があるという見解がほとんどだった。

 休務の原因は、休務した社員のみにあるのだろうか。ストレス耐性の小ささが全ての元凶なのだろうか。私は全く異なる見解を持っている。むしろ、ストレスを与えた方に問題があると言い切れる。ストレッサー(ストレスを与える因子)を、解消しなければならない。

 私はストレッサーを、「自然現象」「設備」「人」の3つに分類して(詳しくはこちらの記事を参照)、その解消方法を演習している。働き方改革への取り組みが進んでいるから、職場でのストレスは減少していると思う人が多いかもしれないが、日々企業で演習を行っていると、「人」に起因するストレスは逆に増大していると感じる。

 具体例を見てみよう。ストレスを感じやすい時は、どのような時かという演習での問いに対する答えは、次のように大別できる。

・やらなければならないことが山積していて、息苦しさを感じる時
・努力しているけれども成果が出なくて、空回りしていると思う時
・なぜそのような仕事をしなければならないのか、理由が分からない時
・相談する人がおらず、ひとりで悶々としている時
・いつまでたっても物事が決まらずに、いたずらに時間ばかりが経過する時
・自分の意見は尊重されずに、黙ってやれと強制される時