トーマスは物理学を専門とし、過去には大学で教えながら環境NGOのトップを務め、バイオマスをはじめとする自然エネルギー政策や電力市場政策、そして原子力政策にも精通している。今のところ、1年間のうち4分の1程度は日本に滞在する予定で、この財団と研究に打ち込もうとする意気込みが伝わってくる。
この財団の活動に、大きく期待してもらいたい。
国内の自然エネルギー普及策は
首相交代で何ら影響受けず
翻って、日本の自然エネルギー政策も、この数ヵ月で大きく前進した。
きっかけは、(太陽光や風力など自然エネルギーによる電気をすべて買い取ることを取り決めた)再生可能エネルギー特別措置法の成立である。首相交代のすったもんだは、政策進展になんら影響ない。
素案時点で懸念された二つの点も、今回は珍しく政党間協議のなかで改善された。
一つは、自然エネルギー電力の買取価格を、それぞれ技術ごとの平均的なコストをベースに決めることになったことだ。素案にあったエネルギー全種について一律価格にする点が消えた。
もう一つは、その買取価格の決定が、経済産業省が集めた電力会社や御用学者ばかりの従来からの総合資源エネルギー調査会でなく、国会が人事同意した新たな委員会でなされるようになったことだ。この委員会は経産相の諮問機関ながら、独立性が高く、そう簡単には電力会社や官僚の言いなりにはならないだろう。
今後、この委員会で協議されるため、実際の価格は来年までわからない。恐らくメガソーラーの買取条件が、15-20年間で1キロワット時35-40円程度になるのではないか。であれば、IRR(内部収益率)3-4%は期待できるはずで、十分な投資効率だと考えられる。
現在施行されている(家庭用の余剰電力のみを10年だけ買い取る)中途半端すぎる余剰電力買取制度でも、昨年だけで100万kW設置が広がった。恐らく、今年度一杯で間違いなく昨年を越えて150万~200万kWまで増えるとみている。