かつて第二次世界大戦後、焼け野原になった欧州で二度と戦争を起こさないという誓いから、「石炭鉄鋼共同体」という経済的な協力関係が生まれ、それが今日の欧州連合の礎となった。
その歴史を踏まえれば、「アジア・スーパーグリッド」構想こそ、未来のアジア共同体の礎になり得るのではないか。その壮大な構想を、原発事故に苦しむ日本から発信するのだ。こんな夢のあるプロジェクトがあるだろうか。今すぐ実現しなくても、その大きな道しるべになるのではないか。
国内の電力融通ができる体制「ジャパン・グリッド」と同時に、電力を海外とやりとりすることもリアルに考えていこう、という発想だ。その対象国は、韓国や中国のみならず、インドやロシアまで広い。
たとえば、韓国との間はわずか約200キロ。海底ケーブルなどを引くことは物理的に可能である。ただ、海外との間に普段使用しない送電線を敷いて、本当に投資回収できるのか、誰が投資するのか、という否定的な意見は多い。それが、成り立つビジネスモデルとソーシャルモデルをいかに組み立てるか、が問われているのである。
我々がいま思い出すべきは、黒船来航のときの心意気だ。
ペリーが黒船を率いてやってきた当時、日本中が腰を抜かした。しかし、その後瞬く間に幕府も各藩も船をもち、精錬所をつくり、明治維新には近代海軍もつくった。恐らく20年ほどの間にやり遂げたのである。今なら、それほどの大きな変化も技術の進展によって5年で成し遂げられていいはずだ。
我々が確固たる意志を持つことで、未来は変えられる。自然エネルギー財団は、その先頭に立つために生まれたのである。