中国に進出し、激動の市場でお客を掴もうとしのぎを削っている日系企業は、数知れない。だが、ただ売り上げを増やすだけではダメだ。営業にかかるコストから将来的なビジネスチャンスまでトータルに見据え、利益を出すための「営業管理」が、最も重要なのである。しかし、日系企業で働く中国人営業マンを、日本の行動原則で管理するのは至難の業だ。日本人社員は、彼らとどのように営業管理のノウハウを共有していくべきか。日本において、営業組織力を強化するコンサルティングの経験が豊富なエルバージュ・マネジメントの谷 公爾・主席董事に、中国の日系企業(特にB2Bビジネス)における営業力強化の秘訣と、営業管理導入のコツを聞いた。
現地の社員にどう根付かせるか
中国でも重視される日本的な営業管理
――中国と日本での営業管理は、どのあたりが違うのでしょうか?
営業管理として行なうべきことは、日本だろうと中国だろうと基本的には同じです。つまり、「営業プロセスを見える化する」「無駄を省き、最大限の成果が出せるようプロセスの改善を図る」「案件ごと、あるいは個々の活動ごとに優先順位をつける」「組織としての体制を整え、案件に対して必要な打ち手を確実に打つ」などになります。
ただし、その営業プロセスを担う営業マンの常識や考え方が、日本と中国ではかなり異なるので、日本と同じように営業管理を進めようと思っても、中国ではうまくいかないことが多いですね。
――中国人営業マンと日本人営業マンでは、どのように常識や考え方が違うのでしょうか?
色々違いはあります(笑)。たとえば、会社の提供するものとお客様の期待するものの間にギャップがある場合、「交渉」という仕事が発生します。自社商品の改善は不断に進めていかなければならないという前提を、ちょっと横へ置いておくとして、日々の営業活動の中に限定して考えたとしても、「自社のスペックを、お客様にご理解いただき、納得してもらうこと」が必要です。
お客様の値引き要求に対して、何とか値引きを抑えていただき、定価に近い金額でご納得いただくとかですね。しかし、多くの中国人営業マンはこういう行動には関心がありません。