坂本龍馬フィギュアのサンプル画像。HPを見ていると、「自分の顔や知り合いの顔をはめ込んだらどうなるか」とついつい想像してしまう、楽しいサンプル商品が多数掲載されている。

 マンガ、アニメが日本文化の1つとして認知されて久しい。その表現方法は、書籍、アニメのテレビ放送、映画、OVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)だけに留まらず、フィギュアの世界へも大きく広がりを見せている。

 プラモデルがジオラマで表現された作品などを観ると、不器用でまともに組み立てることすらできない筆者からすれば、羨ましい限りである。しかし、世の中には器用な人がいるもので、プラモ作りの特技をビジネスに結び付けている会社がある。それが、株式会社 戎(エベス)が運営する「マイフィギュア」だ。

「マイフィギュア」とは、自分の写真を送付すると、様々なプランに合わせて自分そっくりのフィギュアを作ってもらえるというもの。たとえば、常に「憧れの偉人」の上位にランキングされ、昨年の大河ドラマでも再び人気に火が付いた坂本龍馬。もしあなたが龍馬になりたければ、龍馬が写真に映っているあの有名なポーズで、顔だけ自分にそっくりなフィギュアを仕上げてくれる。その出来栄えに、気分はすっかり「龍馬」になること、請け合いだ。

 依頼者自身に限らず、結婚式を行なう友人や還暦を迎えた身内のために、「本人にそっくりのフィギュアをプレゼントしたい」というオファーも多い。プレゼントされた人も驚くのではないだろうか。なにせ、世界に1つしかない「自分そっくりのフィギュア」なのだから。

「禁煙フィギュア」も面白い試みだ。禁煙を宣言してもなかなかうまく禁煙できない人は多いだろう。だが、可愛い子どもから「パパ、タバコやめてね!」なんてメッセージ付きのフィギュアをもらったら、タバコを吸いたい気持ちにストップをかけてくれるのではないだろうか。

 日本テレビのバラエティ番組『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!大晦日年越しSP絶対に笑ってはいけないスパイ24時!!』でも、「マイフィギュア」が製作したフィギュアが使用された。これがまた面白い。GIジョーなどのアクションフィギュアの頭だけを、希望の顔そっくりに作ってくれるのだ。

 つまり、自分の顔でできた可動フィギュアで遊んでしまうということも可能というわけだ。しかも、制作の途中過程で画像を送ってくれる。オファー通りに似ているかどうかを確認しながら仕上げていくのも、ユーザーの要求に応えようという熱意の表れだろう。

「マイフィギュア」のフィギュア制作は、カラープラスチック粘土(オーブンで焼いて凝固させる素材)などは使用せず、写真を見ながら粘土で原型を作成し、その原形からシリコン型を取り、ポリストーンを流し込んで乾燥させて凝固させるという本格的な作り方をしている。カラープラスチック粘土では、どうしても1年程度でヒビが入り始め、最終的にはバラバラになる習性があるからだ。そのため、手間や材料費がかかっても、ポリストーン素材を採用しているのだそうだ。

 品質にこだわっているのは、マイフィギュアが「お客の思い出をカタチにしたい」と考えているからだろう。しかしいずれにせよ、扱いが雑であれば壊れてしまう。マイフィギュアでは、購入から半年間の保証期間を設けており、軽微な破損なら無償で修理対応もしてくれる。

 ここまでこだわってユーザーの要求に応える会社ではあるが、当然ながら依頼者側が肖像権や著作権を侵害する恐れがあることが判明した場合、厳しい措置を取っている。無理な注文はできないことを念のため明記しておく。

 手先の器用な人は、世の中にたくさんいるだろう。「フィギュアを作るのが趣味」という人も多いはずだ。しかし、戎のスタッフたちがその手先の器用さをビジネスとして展開していくには、大変な苦労があったに違いない。

「この世の中に一体しか存在しない、あなただけの思い出を大切にして欲しい」という思いを、スタッフが心に秘めているからこそ、注目を集める企業になったのではないだろうか。

(木村明夫/5時から作家塾(R)