「よくわからない」と思われたら、その先を読んでもらえなくなる可能性が非常に高い。とりわけビジネス上の文章では、一度読んで伝わらなければ、取り返しがつかないという怖さがあります。

『超スピード文章術』に詳しく書いていますが、そもそも文章執筆には、「うまい文章を書かなければいけない」という思い込みや、「文章を書くことそのものが目的になる」というワナがあって、書くスピードが落ちたり、伝わらない文章になりがちです。

「おしゃべりするときのやりとり」は、そういう問題を回避して、読者が読みやすい文章を組み立てる際のヒントになります。

たとえば、同窓会で久しぶりに会った、まったく違う仕事をしている中学の同級生に、あなたの仕事を説明する場面を考えてみましょう。もし、あなたの一番言いたいことが、

「流通のしくみが変わって、利益が倍増した。すごくうれしい!」

という話だったとしましょう。

相手は、あなたの仕事を何も知らない可能性がありますから、そもそもの業界の基本的なしくみや、これまでの流通構造をイチから説明しないと、あなたの「うれしさ」は理解してもらえないかもしれません。前提を知らなければ、結論が理解できないからです。

でも、そういう「前提」の話がダラダラと長く続くと、途中で相手が飽きて、話を聞く気が失せてしまうかもしれません。

そこであなたは、少し「工夫」してみることを思いついた。

「最近うちの業界で革命が起きたんだよ。利益がさ、一気に倍になったんだよ!」

そうやって結論から話し始めて、相手の興味を刺激してから、

「できるだけ簡単に話すから、ちょっとだけ聞いて。もともとうちの流通のしくみってさ……」

と、「前提条件」の話をすることにしました。

一方、同じ業界の気の知れた仲間と飲みながらしゃべるときには、「前提」の話など必要ないでしょう。

A:「あの流通革命の影響、どうよ?」
B:「いや、あれ想像以上にすごいよ。利益倍になったし」
A:「は? マジで? そりゃスゴいな」

そんなやり取りが成り立つでしょう。

つまり、どんな人でも、相手を目の前にしているときは、相手が理解できるレベルで、相手にわかりやすい順番や論理を考えてしゃべっているのです。

それを、文章を書くときにも応用すればいいわけです。始めから、いわゆるロジカルシンキングや、誰かが作った文章の「型」にはめようとしなくていい。目の前の相手に伝わるように素材を組み立てるときに、その人にもっとも伝わりやすい論理が生まれるのです。

だから、「パソコンに向かって文章を書く」という意識ではなく、読者が目の前にいて、その人にしゃべって伝えるつもりで素材の順番を考えていく。

相手の知識や情報の理解度、「何をおもしろいと感じるのか」などを想像しながら、一番すんなりと伝わる「順番」を決めていくのです。

なお、さらに確実に読者に伝わる文章にするために、「読者」と「目的」を決める具体的な方法についても『超スピード文章術』で独自のノウハウを紹介しています。ぜひご覧になっていただき、使い倒してください。