東京都文京区の成沢広修区長は4月3日~15日の約2週間、2月に生まれた長男の育児休暇を取った。全国的にも自治体首長の男性が育児休暇を取得することは珍しく、区長の元には賛否両論の意見が届いたという。
厚生労働省が発表した雇用均等基本調査によると、2008年の男性の育休取得率は1.23%。一部では「男性がもっと育児に参加しやすい環境を作るべき」という声も上がっているが、実際に子育て進行中の夫婦は、育児分担についてどう考えているのだろう。クロス・マーケティング(東京中央区)は、4月に首都圏と近畿圏に住む20~49歳の男女1000人(既婚者、かつ第一子が6歳未満の子どもをもつ)を対象に「『子育て家族の理想と現実』に関する調査」を行った。
高まる「父親の育児参加」意識
これによると、「父親の育児参加は必要だと思う」に「とてもそう思う」「そう思う」と答えた割合は男性が89.2%、女性が97.5%。男女とも、父親の育児参加を必要と考える人の割合は高い。
自由回答では、「生まれる前は亭主関白的な考えであったが、生まれてからは家事や育児を率先して引き受けるようになった」(男性/30代/フルタイム)、「始めはできるか不安だったが、できる範囲で実施している」(男性/40代/フルタイム)、「家事は妻がするものだと思っていたが、パートを始めたこともあり主人がすごく積極的に参加してくれて感動している」(女性/30代/パート・アルバイト)などの声があった。手探りながらも「できる限り積極的に参加していきたい」という意思を持つ男性も多いようだ。
一昔前であれば「育児は母親が行うもの」という考え方も決して少数派ではなかったはず。男女ともに、意識が変わりつつあることがわかる。
家事への参加意識は未だに低い?
しかし、「妻の母親としての役割に満足している」と答えた割合が90%だったのに対し、「夫の父親としての割合に満足している」と答えた妻の割合は75.1%。お互いに低い数字ではないが、妻側の満足度が夫よりも低いことは気になる点だ。
お互いに対する細々とした期待や不満について、次のようなコメントも。
(夫側)
「料理をもう少し勉強してほしい。それほどこだわらなくても手抜きでよいので」(男性・20代・フルタイム)
「あまり気を使いすぎないようにしてほしい。もっと気楽に考えてほしい」(男性・30代・フルタイム)
(妻側)
「家事に協力してほしい。休日は自分の趣味より育児を優先してほしい」(女性・30代・フルタイム)
「母親、父親の仕事と分けるのではなく2人でかかわりたい」(女性・30代・フルタイム)
クロス・マーケティングではこれらの回答をまとめ、「夫は、妻に『家事』『育児』を全面的に頑張ってほしいというよりは、もっと気楽に、肩の力をぬいて生活してほしいと望んでいる。一方、妻は育児に対しては一定の満足や感謝をしているものの、家事への協力に対しては、まだまだ足りないと感じているようである」と分析している。
妻にとっては、育児と家事は切っては切り離せないもの。育児への理解が高まる一方で、家事は未だに妻任せ……という実態があるのかもしれない。
冒頭の広沢区長は、復帰後に「母親の偉大さを痛感した」とコメントしている。実際に数時間でも1人で乳児の面倒を見たことをきっかけに、「これほど大変だとは思わなかった」という感想をもらす父親は多い。育児や家事の手助けがあるに越したことはないが、「大変なんだね」「頑張っているんだね」という共感があるだけでも、精神的に楽になる母親も多いのではないか。たとえ数日という短期間であっても、父親の育児休暇取得が取りやすい社会となることを期待したい。
(プレスラボ 小川たまか)