ソマリア周辺海域で、護衛する商船への接近をやめない海賊船に対して、自衛隊の武器使用を認める「海賊対処法案」の国会審議が14日、ようやく始まった。
これまでの日本政府の対応はあまりにもスピード感に欠けており、お粗末。麻生太郎首相が国会で、野党議員の質問に答えて最初に立法措置を検討すると表明したのは昨年10月のことだから、すでに半年近い貴重な時間が無為に過ぎている。
問題の海域は紅海・スエズ運河の入り口に位置する。日本の原油輸送の大動脈のひとつであることも周知の事実。海賊は放置すれば、日本経済が大きな打撃を受けかねない問題だ。
政府はすでに先月、海上自衛隊の護衛艦2隻を現地に派遣、「海上警備行動」を開始させている。見切り発車しながら、法的な不備が残っている現状を打開するため、1日も早く同法を成立させる必要がある。
日本関係の船舶への被害も増加
自助努力だけでは限界に
アデン湾は年間、3000隻の日本商船が航行するとされる海の大動脈だ。外務省によると、この海域では近年、海賊事件が増加する傾向があった。具体的には、2006年が20件、2007年が44件、2008年が111件と増加。さらに今年に入ってから4月13日までに、すでに73件の海賊事件が発生したとされる。
もちろん、日本関係の船舶だけが難を免れることは不可能である。
最初とされる被害は、一昨年(2007年)10月のことだった。ソマリア沖で、海賊に日本の海運会社が運航するタンカーが乗っ取られる事件が起きた。このタンカーは、ドーヴァル海運(本社・東京中央区)が運航するパナマ船籍の「ゴールデン・ノリ」というケミカル・タンカーだ。ベンゼンなどの化学製品を搭載し、シンガポールから欧州へ向かっていたところを乗っ取られて、米独両国の海軍が追跡。12月12日になって、海賊がタンカーから退去し、乗組員らが解放されたのだった。
2008年4月、再び、日本関係の船舶が被害にあった。日本郵船の大型原油タンカー「高山」(日本船籍、約15万トン)が同月21日、イエメンのアデン湾東方沖約440キロメートルの海域で、小型の不審船から発砲を受けて被弾したのだ。ドイツのフリゲート艦「エムデン」が現場にヘリコプターを急行させたお陰で、「高山」の日本人7人を含む23人の乗組員は全員無事だった。しかし、船体は銃撃で左後方部が損傷、一部燃料漏れの被害が出たという。日本関係の船舶が襲われる事件は、同年7月と8月にも発生した。外国船の被害は枚挙に暇がない。