醤油や味噌にもこだわりがあり、岐阜の飛騨高山の味噌専門店を訪れて買い求めたり、醤油もわざわざ福井まで買いに出かけたという。

 東京のスーパーでは「成城石井」や「紀ノ国屋」がお気に入りだ。食品の場合、中国に持って帰れないものがあるが、ミニサイズを自分用に買い、日本に住む中国人の家で実際に調理してみるというほどのこだわり派。薬味にもこだわっていて、ネギ、ミョウガ、大葉など日本の薬味を北京の自宅のベランダで栽培し、日本で栽培するのと味の違いを比べてみたりしているという。

日本の器にも凝り出し
産地を回る

 最近では日本の器にも凝りだした。中華料理は大皿に盛りつけることが多い。おしゃれな店では小皿に取り分けてくれることが増え、皿にも凝るようになったものの、日本料理のように、料理の種類に合わせて皿の色柄やサイズなどを細かく分けることまでは行わない。だから、日本に来て「小鉢とか、焼き魚用のお皿とか、こんなにお皿の種類が多いことにびっくりした」と彼女は言う。

『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社) 、中島恵著、定価850円(税別)

「どんな皿にどんな料理を盛りつけるか。どんな料理にはどんな皿が合うか、中国人はそんな繊細なことは考えてみたこともない。器の産地を回る旅だけでも、日本旅行には十分な価値があると思う」

 そんなことを言う彼女に、逆にこちらのほうが驚かされるが、中国人の旅行はすでにこんなに高いレベルにまで到達していることを思い知らされた。

 中国人の旅行といえば、日本では今も銀座を闊歩する団体旅行客を思い浮かべる人が多い。爆買いブームですっかり「ステレオタイプ化された中国人」が脳裏に焼きついているかもしれない。

 むろん、まだそうした中国人もいるのだが、成熟層は私たちが知らない間に、こんな旅を楽しんでいる。私たち日本人が思い浮かべる「中国人像」は皆一様で、なかなか変わらないが、現実は大きく異なっている。旅行ひとつとっても、その流れはもう止められないほど変わってきているのだ。