仕事が遅い人の「毎朝」の行動パターン
[悪い例]
デイヴは出社すると、まっさきに食堂に向かい、コーヒーをカップについだ。食堂にはリサとテッドがいて、昨夜の親睦会について15分ほど話を聞かされた。雑談中、かれらは何度か笑い声をあげた。こうして同僚と親睦を深めて1日を始めるのはいいものだと、デイヴは自分に言い聞かせた。それに、無愛想なやつだと思われたくない。
ようやくデスクに到着すると、メモが置かれていた。きのう退社したあと、経理部の新マネジャーが伝言を残していったのだ。どうやらアップグレードした給与計算システムにデータを入力する必要があるらしい。そこで、彼はしぶしぶ経理部に向かって歩きだす。彼は毎朝、こうした「雑務」から仕事を始める。用事は忘れないうちにすませてしまうにかぎる、と考えているのだ。
オフィスに戻ると、書類の束をもった部下のネルソンが帰りを待ちかまえていた。ネルソンは「マーケティングチームが無能きわまりないんですよ」と痛烈な非難を始め、その証拠として宣伝用チラシを振りかざす。デイヴはその話をいいかげんに聞きながら、メールの受信箱をクリックし、即座に削除できるものをチェックしていく。もちろん、上司として部下の支援に力を惜しみたくはないが、同時に自分の作業を進めないと仕事が片づかない。
ちょうどそのとき、ベティがドアのところにさっと顔をだし、「スタッフミーティングが始まります」と告げた。デイヴ以外は全員、すでに会議室に集まっているという。デイヴは「すまない、失礼するよ」と慌ててネルソンに言い、タブレットをひっつかみ、ベティのあとを追い、ドアの外にでた。これで、少なくともネルソンからは逃れられたというわけだ。
デイヴはスタッフミーティングを毛嫌いしている。だからミーティングのあいだはメモをとるようなふりをして、大半の時間、テーブルを挟んで正面に座っているテッドとメッセージのやりとりをしている。と同時に、増えるいっぽうのメールの山を減らすべく、数通のメールに返信をする。しばらくすると、上司のグレースから意見を求められたが、なんの意見も述べられない。そもそも、なにが話題になっているのかさえわからないのだ。
そこで彼は「ここのところ年齢のせいか耳が遠くなってきたので、よく聞こえませんでした」と、その場をとりつくろった。ほどなく、ミーティングはようやく終了した。
1日は猛スピードですぎていく。直属の部下のカリッサには「申し訳ないが勤務評定はまた延期させてくれ」とメッセージを送る。
そして正午までに提出しなければならない重要な提案書に急いで目を通しはじめる。やがて電話会議が始まるが、デイヴはまだ提案書にこっそり目を走らせている――やむをえない、そうしないと間にあわないのだ。
そして、ついに送信ボタンを押し、提案書を送信するが、しばらくすると、いくつかのデータに不備があったことを思いだし、あわてて「午後になったらフォローアップのメールを送る」「データにあやまりがあれば修正する」とメモをとる。そして、おそろしく長くなった「することリスト」のいちばん上に、その内容をつけくわえる。
そのあと、デイヴは階段を駆けあがる。今週、CIOと打ち合わせをするアポをとるには、CIOのアシスタントとじかに交渉するほうが得策だと考えたからだ。ところが、当のアシスタントはミーティングに出席中だという。そこで彼はミーティングが終わるまで待つことにする。
そのとき、ふいに、転職希望者に推薦状を書いていなかったことを思いだす。結局、妻とのランチの約束時刻に15分遅刻し、午前中、思うように仕事ができなかったことを腹立たしく思いながら食事を始める。