選挙のたびに政党が分解や新設されている。今回の総選挙で民進党出身の候補者は、議席確保のために希望の党に合流したり、立憲民主党に加わったり、はたまた当選機会は減るが志を優先して無所属で出馬するなど様々だ。選挙は候補者個人の「政策」よりも「どの政党に属すか」が勝敗を決める大きな要因になる。政治にとって政党とは何なのか、政治学者である中央大学法学部長 中島康予教授に聞いた。(構成/ダイヤモンド・オンライン編集部 松野友美)
政治家の理屈では
合理的な「不意打ち解散」
安倍政権の突然の解散によって、野党第一党の民進党は分裂し、新たな対立勢力として一時は希望の党が注目を集めたかに見えたが、今は、立憲民主党の存在感が増している。
自民党は、不意打ちの解散を行うことで、野党の選挙準備が整う前、つまり政敵の弱りに目を付けて解散した。森友学園や加計学園の問題、お友達内閣への批判はあれど、政策を進めるためには「勝つ」ことが最低条件なので、今回のタイミングは連立与党の政治家の理屈では「合理的」だ。
「政策本位の選挙」が1990年代以降の政治改革の目的だったが、選挙に勝ち、議会の多数を占めなければやりたいことが実現できないのも事実。政策よりも選挙に勝つことが優先されることの背景にはこうした現実がある。
しかも、政治家が当選するチャンスを増やすには、「政党」に属することが重要だ。民進党出身の候補者は、多くが希望の党か立憲民主党に合流するという選択をしている。
政党は、うまく風をとらえるように帆を張って前に進む「船」のようなもの。船に乗り込まないと選挙区の海で溺れてしまう危険が高まってしまう。無所属で出馬する政治家は、そのリスクをあえてとっている。
無所属では小選挙区にしか出馬できず、比例での復活当選のダブルチャンスがない選挙制度をとっているせいだ。議員になるためには、どこかの政党に属することがまず大切なのだ。つまり、政党は有権者のためというよりも政治家のために存在している。
他方、政策本位選挙が理想だが、政党が提示する政策パッケージが投票を難しくしている側面もある。なぜなら、政策パッケージの一部は賛同できるけれど、反対する要素も含まれていることがあるからだ。そうなると有権者は、自分の要望に優先度をつけるか、選挙後の政党間の力関係、国会の勢力地図を予測して投票先を決めなければならない。
有権者にとってベストな政策がない中で投じた「一票」を議席に変換する仕組み、つまり選挙制度を通して、私たちの声は議会に届けられる、あるいは、届けられないということになる。今の政治はこうして変換された“数”を盾に政治家や政党、政権がその正統性を強調する傾向が強くなっている。その名も「集計民主主義」が幅を利かせているように私には感じられる。