さらに就学前の子どもについても、遺伝子セラピー療法を使って賢い子どもに育てましょう、という企画も出ている。
“HOW TO BUILD YOUR BABY'S BRAIN: Tap Your Hidden Ability as a True Gene Therapist to Raise a Smart, Secure & Successful Child”/Gail Gross
著者のゲイル・グロス教授は悲劇に見舞われた家族のPTSDに対処する専門家として、ウォール・ストリート・ジャーナル紙やタイム誌、ペアレンツ誌に寄稿してきた。この本ではいわば、「心の成長」を見守るという視点から子育ての時にどのように接していけば、将来健全な心(脳)を持ったリーダーやイノベーターとなる下地を作ることができるのか、という本になるようだ。
類書としてもう1冊。
“RAISING AN EMOTIONALLY HEALTHY CHILD”/Maureen Healy
(翻訳権取り扱いはTaryn Fagernessエージェンシー)
という本を上梓予定の著者モーリーン・ヒーリーは、サイコロジー・トゥデイ誌などに登場する「世界幸せサミット」の創設者だ。この団体は、国連と米コロンビア大学が創立した「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が発行する世界幸福度報告の調査結果を受けて、設立された。毎年話題になるこの報告書で(日本のランキングは53位)14位だったアメリカでは「幸せとは自ら努力してなるもの」と位置づけて、さらなるランクアップを目指し、研究調査が進められている。
この本は、カウンセラーといった専門家だけでなく、親や教師に向けて子どもたちがポジティブな「心の健康」を自ら実現するには、どういうツールを使い、指導できるかを紹介している。困難や挫折に負けない心の作り方と言い換えることもできるだろう。
「食育」の重要性が認識され始めたアメリカ
健康な心が宿る体の方はどうだろう。アメリカの食文化といえば、昔からジャンクフードを食べてばかりの肥満大国というイメージがあるが、最近は少しずつ意識が高まっており、「食育」なるものも重視されるようになってきている。大人の間では様々な“ヘルスフード”が流行っては廃れていくが、子どもに何を食べさせるかが重要だということに気づきはじめたようなのだ。
“THE 101 HEALTHIEST FOODS FOR KIDS: The Best Real Foods for Kids to Eat and Wh”Sally Kuzemchak
この本では単に栄養のある食事のレシピを紹介するだけではなく、子どもに「なぜ」その食べ物を食べることが体にとっていいのかを親にも理解してもらった上で取り組んでもらおうという、「食育」重視の一冊だ。子どもに食べさせる工夫をするだけではなく、親もマスコミやネットのあやふやな情報に惑わされないことから始めなければ意味がないとし、その上で、子どもにも納得して食べてもらえることを目標としている。
著者は栄養士として自分のヘルシーなライフスタイルに自信を持っていたが、子どもを産んで、自分の健康のことを優先させるのがどんなに大変なことかを思い知ってこの本を書くことにしたという。
ネット上に間違った食の情報が溢れ、怪しげなダイエット本がセルフ・パブリシングで読めてしまうのは日本も同じかもしれないが、アメリカはとにかく訴訟社会なので「本が勧める通りにやってみたが、結果が出なかった」という理由ですぐ訴えられてしまうという背景がある。「~でガンが治る」「~さえ食べれば必ず痩せる」という本が少ないのはこういう事情があるのだ。