佐藤智恵氏

ジョーンズ いくつか理由があります。まず1つめは、社会における企業の役割が増大してきたことです。20世紀前半は、政府が様々な分野に介入していた時代で、社会福祉から公衆衛生まで、何もかも政府主導で政策を行ってきました。

 ところが、1980年代に入ると、規制緩和と自由化の時代が訪れます。そこで多くのビジネスと起業家が生まれました。このネオリベラリズムの世界において、かつての政府の役割を果たすようになったのが起業家なのです。

 環境問題についても同じことがいえます。第二次世界大戦後、環境問題は政府が解決すべき問題でした。ところが1970年代、1980年代になり、企業が力をもちはじめると、企業が主体となって問題を解決していこうという動きが出てきました。その中で、ホールフーズ・マーケットを創業したジョン・マッキーのような起業家が出てきたのです。

佐藤 1980年創業のホールフーズは、今や売上1.7兆円企業に成長しています。社会的企業のほうが儲かるから、という理由もありますか。

ジョーンズ もちろん市場のニーズもあります。たとえば、今、消費者の中には「グリーンコンシューマー」と呼ばれる人たちがいます。環境にやさしい消費生活や地球環境への負荷の少ないライフスタイルを求める消費者のことです。こういう消費者からのニーズもあって、ホールフーズのような企業は成長しているのだと思います。

ジェフリー・ジョーンズ (Geoffrey Jones)
ハーバードビジネススクール教授。専門は経営史。同校の経営史部門長及びハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所教授。MBAプログラムでは選択科目「起業家精神とグローバル資本主義」を教える。グローバルビジネスの歴史と責務を専門に、金融、貿易等のサービス分野から化粧品、トイレタリー等の消費材分野まで幅広く研究し、多くの著書を執筆。現在の研究テーマは、環境ビジネス史。主な著書に「グローバル資本主義の中の渋沢栄一―合本キャピタリズムとモラル」(共著、東洋経済新報社)、「国際経営講義―多国籍企業とグローバル資本主義」(有斐閣)。近著に 「Profits and Sustainability: A Global History of Green Entrepreneurship」(Oxford University Press).
佐藤智恵(さとう・ちえ)
1970年兵庫県生まれ。1992年東京大学教養学部卒業後、NHK入局。報道番組や音楽番組のディレクターとして7年間勤務した後、2000年退局。 2001年米コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。ボストンコンサルティンググループ、外資系テレビ局などを経て、2012年、作家/コンサルタントとして独立。コロンビア大学経営大学院入学面接官、TBSテレビ番組審議会委員、日本ユニシス株式会社社外取締役。主な著者に『世界のエリートの「失敗力」』(PHPビジネス新書)、『ハーバードでいちばん人気の国・日本』(PHP新書)、『スタンフォードでいちばん人気の授業』(幻冬舎)、最新刊は『ハーバード日本史教室』。佐藤智恵オフィシャルサイトはこちら