旧態依然とした体質からの脱却

 新しい土地に来たと言うのに、なぜぬるま湯体質が継続しているのか。どうやらそれは、ファイターズだけにとどまらない球界全体の風土が原因をなしているようだった。

 野球界は長年、日本国民のポピュラーな娯楽として栄えてきた。それゆえに、シビアな「ビジネス」の感覚は希薄だったと言わざるを得ない。かつては放っておいても、夜になれば国民の多くが野球中継にチャンネルをあわせた。そして一部の――というより読売ジャイアンツという――球団の人気が、豊富な資金力をもとに球界の繁栄を支えてきた。人気のない球団は、人気球団の繁栄のおこぼれをもらうことだけを考えていた。これではジャイアンツとの試合の機会を持てないパ・リーグの球団が先細りするのは当たり前である。

 球界再編騒動以降、パ・リーグの危機意識が高まってきたのは良いことだったが、今度は野球人気自体が地盤沈下を起こし始めた。消費者の好みが多様化し、野球は数ある娯楽の中の一つに過ぎない存在になった。それ自体は深刻なことではない。巻き返せばいいだけの話だからだ。しかし、この事態を「景気が悪いから」などと責任転嫁してしているように私には見えた。

自分たちの手で面白いものを作ろう、という意志が欠けている」

 それが、ファイターズも含めた当時の球界全体に対して私が抱いた印象である。2004年の時点で、スポーツビジネスに携わってから8年が経過していた。その中で私は、「スポーツビジネス=サービス業」という意識を強く形成してきた。

 しかし球界はそうではなかった。野球選手たちは自分たちが強くなることだけを目指せばよい、と考えている者が多かった。そこにファンへの視点が欠けていることは明らかだ。そして、それが各球団の価値観の反映であることは言うまでもない。

 ファイターズには、そのような旧態依然とした価値観から抜け出してもらいたかった。新天地で生まれ変わること、そしてファイターズ全体が「スポーツビジネス」の新しい形を体現する組織になること。それが新たな目標となった。

(本連載は、藤井純一著『日本一のチームをつくる』から抜粋、改稿したものです。)
 


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