事業創造には、帰納法的アプローチと演繹法的アプローチがあることは前回述べた。多くの既存企業は帰納法的アプローチを取っている。顧客を観察することから共通のニーズを理解することが基本だ。
一方、ベンチャー企業、とりわけスタートアップと呼ばれる急成長する企業は、演繹法的アプローチを取る。仮説に基づいて潜在ニーズを想像し、事業設計するのである。既存企業が思いも寄らない事業を展開することにより大きな成功が期待できる一方で、失敗の確率が高い。
リスクの高いスタートアップに資金を提供し、その成長を促しているのがベンチャーキャピタル(VC)の存在だ。
特にシリコンバレーを中心として活動する米国のVCは、演繹法的アプローチで起業・発展するスタートアップを育ててきた。米グーグルや米フェイスブックのようなもともとスタートアップだった企業は、あっという間に巨大企業となり、今では老舗企業の企業価値を抜いてしまったほどである。
今、日本企業がそのVCに急接近している。VCに出資することにより、新たな事業へのきっかけにしようとしているのだ。
だが、既存企業は大きな成功よりも失敗しないことの方が重要と考える。帰納法的アプローチに慣れているからだ。演繹法的アプローチのVCからメリットを得るためには、VCのどのような性格を理解しておく必要があるだろうか。