ポイントは、双方が望む利益は何かを発見したことだ。イスラエルは領土が欲しかったわけではなく、安全が欲しかった。エジプトはシナイ半島という領土を取り返したかった。だからエジプトは、シナイ半島の非武装化を提案し、イスラエルとの間に単独講和条約を締結した。

 イスラエルはエジプトから攻められないという利益を得て、エジプトは失った領土をイスラエルから取り返すという利益を得た。双方の利害が一致するポイントを見つけて、そこにフォーカスして交渉するというのがハーバード流交渉術だ。

「ガチンコでない状況」に
絶対触れないという交渉術

 では貴乃花問題はどうなのか。ここで解決のポイントになるのは、「抵抗勢力」と呼ばれる人たちも、八百長が行われることを容認しているわけではないという点だ。理事長や理事たちも、横審のトップである大手新聞の論説委員も、評議員会トップの華道家元も、その点に触れたくないだけで、もしどこかに「ガチンコでない状況」があるとすれば、それはいいことだとは思っていない。

 もしも「ハーバード流貴乃花親方」が存在すれば、そこに触れない解決方法を志向することになる。双方が議論を始めることに合意できる論点を探すのだ。

 具体例を挙げてみよう。この問題を「アスリートとして適正な試合のインターバル問題を改革したい」という名目で取り上げたらどうなるか。

 メジャーリーグの試合は週1回休めばほぼ毎日開催できるが、サッカーの試合は週2回が限界だ。マラソンでは2週連続で大会に出るのは無謀だと言われている。ボクシングなら公式戦の後、次の試合までに数ヵ月をおいたほうがいい。スポーツによって、適正な試合のインターバルはスポーツ医学的見地から見て異なる。

 相撲の場合、15日間連日相撲を取り続けることが、力士の健康や安全上の問題だと言われている。力士同士のぶつかり合いは、一般人ならば毎日交通事故に遭っているのと同じダメージを身体に与えるからだ。毎日相撲を取るという今のルールは、現代医学上は適正なインターバルだとは言えない。