「本物」の英語ですか?――素材のオーセンティシティ

日本の教育では、無味乾燥な素材を使って、ひたらすら基礎固めの“修行”をしてから、そのあとに大して面白くもない応用編がおまけのようについてくる、というのがお決まりの流れになっています。
しかし、「学習用に調整された英語」ではなく、噛み応えのある「本物の英語」を味わう機会は、年齢に関係なく必須です。

SLAの世界でも、素材となる英語が本物であること(Authenticity)が、学習効率に大きな影響を与えるという報告があります(Snow & Brinton,2017)。
逆に言えば、ネイティブが絶対に口にしない「加工済みの不自然な例文」ばかりをインプットしても、英語力はなかなか高まりません。英語をスムーズに身につけたいのなら、英語を母語とする人たちが生み出したオーセンティックな(本物の)英文素材を選ぶべきなのです。

英語は世界中で話されている共通語ですから、何が本物で何が偽物なのかはかなり曖昧なのも事実です。ただし、社会に出たときには、自然な英語を使えるかどうかは、現実問題としてその人の評価を大きく左右します。そんな事情も考慮すると、やはり学習素材には「本物として通用する英語」を選ぶべきだと思います。

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さて、これまでの連載を少し振り返って、まとめておきましょう。子どもの外国語学習においては、次の3つを意識することが大切でした。

1 「文字」ではなく「音」から学ぶ
2 「断片」ではなく「かたまり」で学ぶ
3 「英語を」ではなく「英語で」学ぶ

これが基本中の基本です。とてもシンプルですよね。

ただ、これを踏まえていても、じつはまだ「小さな落とし穴」はいくつかあります。次回からはJ PREPの親御さんたちにもよく見られる5つの誤解を取り上げていくことにしましょう。

(本原稿は斉藤淳・著『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』から抜粋して掲載しています)

【著者紹介】斉藤 淳(さいとう・じゅん)
J PREP斉藤塾代表/元イェール大学助教授/元衆議院議員。
1969年、山形県生まれ。イェール大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。研究者としての専門分野は比較政治経済学。ウェズリアン大学客員助教授、フランクリン・マーシャル大学助教授、イェール大学助教授、高麗大学客員教授を歴任。
2012年に帰国し、中高生向け英語塾を起業。「第二言語習得理論(SLA)」の知見を最大限に活かした効率的カリキュラムが口コミで広がり、わずか数年で生徒数はのべ3,000人を突破。海外名門大合格者も多数出ているほか、幼稚園や学童保育も運営し、入塾希望者が後を絶たない。
主な著書に、『ほんとうに頭がよくなる 世界最高の子ども英語』(ダイヤモンド社)のほか、10万部超のベストセラーとなった『世界の非ネイティブエリートがやっている英語勉強法』(KADOKAWA)、『10歳から身につく問い、考え、表現する力』(NHK出版新書)、また、研究者としては、第54回日経・経済図書文化賞ほかを受賞した『自民党長期政権の政治経済学』(勁草書房)がある。