自由とセルフマネジメント

 フリーエージェント・スタイルは、良いとこ取りのワークスタイルである。大企業だと自分がやりたいことがなかなかできないけれど、独立してフリーランスになると、自由が増えるかわりに組織にいることのメリットはなくなってしまう。

 スケールを広げるきっかけもなかなかつかみにくかったりして、結果的にやりたいことができずに、やりたくないことをやって食べていくということもあるかもしれない。フリーランスが集まってプロジェクト単位でその都度チームを組むのもいいけれど、もうちょっとだけ一体感があると物事はパワーを持ってくる。

 僕らにとっては、組織として働くことが必要だった。やろうとしたことが「チーム」でやるべき仕事だったからだ。そして、個人と組織の両方の良さを失わずに手にしようとたどり着いたのが、「フリーエージェント・スタイル」だった。

 フリーエージェントは、文字通りフリー(自由)である。自由は、時間の自由であったり、動き方の自由であったり、あるいはそもそも組織への関わり方の自由、あるいは仕事のスタンスの自由という意味も含んでいる。自分がいい仕事をするために自分で動き方を決めればいい。

 チームとお客さんに対して誠実でフェアでさえあれば、いつ働くのか、いつ休むのかも決めるのは自由。働く場所は、オフィスでも自宅でもカフェでもいいし、平日だってちょっと時間が空いたら映画を観に行ってももちろんOKだし、調子の悪いときは昼寝してもサボっても当然、構わない。

 必ずしも全員が売上数字を達成するためだけに動く必要もないし、自分のテーマや目的に応じてやればいい。一定の成果は求められるけど、やり方は人に決められることはない。新規プロジェクトには誰でも参加することができる。

 一方で、フリーエージェントには厳しさもある。すべては自己責任、自分のことは自分でマネジメントしなければならない。誰かに指示されて動くわけではないから、自分に厳しくなければどんどん堕落する危険がある。これは人によってはシビアなことだ。

 そして自由と引き換えに、メンバーたちは自分の経済に責任を持つことになる。当然、いつも同じ給料をもらえるわけではないし、メンバー間で報酬にも差が出る。おもしろい物件を見つけ、マッチングするという成果がゼロならば、収入がゼロになるということだってある。

 プロ野球なら結果が出なければ戦力外通告をされてクビになったり、二軍落ちになってしまうけれど、僕らの場合も、結果をダイレクトに社内で共有するので、調子が悪かったりすると比較の目にさらされる。実際、結果が出ないので、もう辞めますと自ら「引退」した人もいる。そうしたシビアさまでプロスポーツに似て、ここは実力社会でもあるのだ。