安倍政権が進める農政改革が、初めて自民党農林族の抵抗で骨抜きになった。
政府は8日、青果物や水産物の流通を担う中央卸売市場の改革を決めた。中間流通業者の競争を阻害し、市場衰退の元凶になってきた卸売市場法を廃止する方針だったが、抜本的な改革は先送りした。
農林族の勝利宣言は露骨だった。「(卸売市場の)業界の皆さんが心配されたことは今回の整理に入れ込んだ」。自民党の野村哲郎農林部会長は市場改革の考え方をまとめた会合で、業界に配慮したことを何度も強調した。
小泉進次郎氏の後任として8月から農林部会長を務める野村氏は、JA鹿児島県中央会の常務を経て政界入りした筋金入りの農林族だ。野村氏の他にも、安倍晋三首相と距離を置く森山裕元農相ら農林族の重鎮が抜本改革に反対した。
改革派の農水省幹部は「官邸に対する党の力が強まっていた。ある程度の妥協は仕方がなかった」と悔しさをにじませた。
農林部会長として農協改革をリードした小泉氏も、議論の開始時こそ市場改革に前向きな発言をしたが、終盤戦は沈黙してしまった。