中国が突然“クリエイティブ”に!「メイカーフェア深セン」で見た異変広いわけでも高額な機材があるわけでもないが、いつもメイカーにあふれる柴火創客空間。深センのクリエイティビティを象徴するOCTエリアに設立された(写真は2016年に撮影。現在は新しいスペースに移転中)

 中国の創業ブームは、李克強首相が深センのメイカースペースを訪れて会員名簿にサインしたことから始まった。メイカースペースは、これまで触れてきたような趣味の集まりのためのスペースで、プロの研究所ではない。プロの研究所である科学院でなく、メイカースペースから始まったという意味で、深センはDIYの聖地でもある。おそらく、深セン市政府のこの政策群はトップダウンで始まったのではなく、深センのメイカーたちが行っていた活動をボトムアップ的に吸い上げた結果なのではないかと伊藤准教授は分析する。

 本連載「史上最速で成長する都市『深セン』からカルチャーは生まれるか」でも触れた、李克強首相が訪れたメイカースペース「柴火創客空間」は、深センの民間企業Seeedがスポンサードして開かれた、まさにボトムアップで作られたスペースである。

深センのDIY発明ブームを作った男
Seeedの創業者、エリック・パン

 FacebookやAirbnbのようなWebサービスで世界を変えたい若者は自分の夢にBETしてくれる投資家を求めてシリコンバレーに、そしてアイデアをハードウェア製品に変えたい若者は製造環境を求めて深センに集まっている。そうした自分のアイデアでハードウェアを作る人たちを「メイカー」と呼ぶ。起業を目的としているかどうかは問題ではない。メイカーである大学教師も、メイカーである芸術家も、メイカーである会社員もいる。筆者は会社員で別にライターやイベントの運営などもしているが、趣味でビールを醸造したりもする(僕の住んでいるシンガポールでは合法)。友達は僕を「メイカー」と呼ぶ。

 近年、3Dプリンタや開発用マイコンなどが手軽に入手できるようになってプロトタイプ作りが身近になり、Youtube等の動画サイトやSNSでマーケティングに必要な資金が下がり、クラウドファンディングで資金調達が手軽になったことで、Kickstarterなどのクラウドファンディングサイトでは、連日それまでになかったようなハードウェアが発表され、人気を集めている。

中国が突然“クリエイティブ”に!「メイカーフェア深セン」で見た異変2017年9月に日本版もローンチしたクラウドファンディングサービス 「Kickstarter」

「メイカーフェア」は2008年にアメリカから始まったイベントだ。主催は技術書の出版などでエンジニアには有名なオライリー社(その後分社化してメイカーメディア社)。Web2.0という言葉の提唱者であるティム・オライリーと共に役員を務めるデール・ダハティが始めたこのフェアは、それまでの産業見本市的なハードウェアのショーと違い、「個人が」「自分の思いで」作ったものを持ち寄るイベントであり、余人には理解しがたい「変なもの」が集まる。