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イノベーションを
駆動しているものは何か?

 現代の世界は数え切れないほどのイノベーションが連鎖することでかたちづくられた。本書の著者スティーブン・ジョンソンが前著『世界をつくった6つの革命の物語』で示したように、ある分野のイノベーションは全く別領域でのイノベーションを誘発し、ときに想像すらできない変化をもたらしうる。印刷機の発明はインターネットを、衛生観念の発達はマイクロプロセッサを生み出した。著者はこのような予測できないが因果関係の明確なイノベーションの連鎖を「ハチドリ効果」と呼ぶ。

『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』
スティーブン・ジョンソン(著)、大田直子(訳)、朝日新聞出版、416ページ、2100円(税別)

 それでは、このようなイノベーションを駆動しているものは何だろうか。それは、より長く生き多くの子孫を残したいという生存本能だろうか、はたまた自由・平等・自立を求める高尚な思想だろうか、それともより効率的な生活を求める改善思考だろうか。もちろん、明確な効用をもたらす必需品を人類は強く求め続け、ワクチンのように有用なイノベーションをもたらした。しかし、必需品だけでなく贅沢品の歴史も、現代世界の成り立ちを知るためには重要だと著者は主張する。

“近代的なものには、別の種類の活動、すなわち手品やおもちゃやゲームなど、一見ふまじめな気晴らしに戯れることに端を発しているものが、驚くほどたくさんある。”

 本書『世界を変えた6つの「気晴らし」の物語』では、「ファッションとショッピング」、「音楽」、「味」、「イリュージョン」、「ゲーム」、「パブリックスペース」に端を発するハチドリ効果が巧みに語られる。この6つ分野は、生きていくことだけを考えれば絶対に必要とはいえないかもしれないが、現代社会を支える必需品を生み出すためのイノベーションの端緒となっているのである。