アパレル業界がかつてない不振にあえいでいる(写真はイメージです)

アパレル業界がなぜ
不振にあえいでいるのか?

 国内の衣料品(アパレル)業界がかつてない不振にあえいでいる。バブル崩壊直後や、リーマンショック後ではなく、なぜ「今」なのか? アベノミクスは一定の成果を上げ、マクロ経済は比較的安定している。にもかかわらず、今になって突如、深刻な不振に見舞われているのはなぜなのか? ということを、川上(生地を生産している企業)から川下(小売店)までを縦断的に取材してその原因を明らかにしたのが本書『誰がアパレルを殺すのか』だ。

『誰がアパレルを殺すのか』
杉原淳一・染原睦美
日経BP社
252ページ
1500円(税別)

 一番の原因は業界全体に蔓延する「思考停止」にあるという。多くの関係者が、過去の成功体験から抜け切れずに目先の利益にとらわれ、年々先細りして競争力を失っていた。また深刻な「分断」があることも原因の一つだろう。分業体制が進み、川上の企業が、川下で起きていることをほとんど把握していないそうだ。

 数字の面を見るとアパレルの国内の市場規模は1991年に15.3兆円あったものが、2013年には10.5兆円と3分の2に縮小している。それにもかかわらず供給されるアパレルの数量は約20億点から約39億点とほぼ倍増しているのだ。需要に関係なく、単価を下げるため、ムダを承知で大量に生産をし、目先の売上を作るために、消費者のニーズに目を向けず、内輪の論理に基づいて商品を大量に供給するという悪循環が起きている。

 この話を聞いたときに、まったく同じ構図を持つ業界が頭に浮かんだ。出版業界である。出版社、取次、書店という業界の「分断」。過去の成功体験から抜け切れず「思考停止」に陥っているということ。目先の売上を作るための大量供給。どれもまったく同じことが起きている。出版業界の市場規模(書籍)と発行点数を同じスパンで見たところ、市場規模は1991年に9400億円あったものが、2013年には約7800億円と8割に縮小しているのに対し、発行点数は約4万点から約8万点と倍増していた。

 1章のPART1後半に出てくるコンサルタントのセリフがとても印象的なので引用する。