血液が固まる仕組み
長引くと「梗塞」に

 全身をスムーズに循環するために、血液は血管内ではサラサラの状態で、固まることはありません。先述のように血管に傷がついて出血し、その後、生理的な血栓がこびりついて止血した後には、血管の内側はいずれ綺麗なツルツルの膜に復元され、止血のために作られていた血栓も消失します。生理的には血管の中では血液は固まることがないので、もちろん血栓もありません。

 ところが、何らかの原因で、血液の流れが滞ったり、血液が極端に固まりやすくなったり、もしくは血液が流れている血管の内側の壁に汚い粕(かす)がこびりついたりすると、固まるはずのない血管の内側で“血液が固まる=血栓ができる”ことがあります。

 血液はいったん固まり出すと、その後、あっという間に相当量の血栓が作られます。ひとたび血栓が発生すると、その血栓にぶつかった血液がまた血栓を作り、新しくできた血栓にまた血液がぶつかって血栓ができるというように、次から次へと流れてくる血液が血栓を作っていくという、血栓形成の連鎖反応が起きてしまいます。

 血栓がどのくらいの大きさまで作られるかは、血行状態や血液の固まりやすさなどに影響されます。例えば、障害物として発症した血栓が、血管内を完全に閉鎖してしまったとしたらどのようなことが起きるでしょう。

 正に血管にしっかりと栓がされたように、そこから先に突然血液が流れなくなるわけです。血液は、組織が生きるために必須の酸素や生理活性物質を運んでいますので、血液の供給が突如として途絶すると、組織は生きていくことができません。

 血流が遮断された時間が長引くと、その組織は死に絶えてしまいます。これが「梗塞」と呼ばれる現象です。梗塞はその発症臓器に応じて、例えば心筋梗塞、脳梗塞、肺梗塞などと呼ばれます。

 動脈硬化の成れの果てとも言える臓器の梗塞は、その背景に血栓症があるのです。病的な血栓は、忽然と発生して瞬時に血流を悪化させるので、血栓症として表現される疾患は全て急激な変化をたどり、中には突然死を来すものもあります。

 そして、血栓症は動脈硬化のみで発症するわけではありません。生来健康な方が日常生活を普通に送っている時でも、突然発症する可能性があるのが血栓症の怖いところです。血栓症は、つい先ほどまで何ら問題なく周囲の人たちと会話を交わし、日常生活を送っていた人が突然倒れたり、最悪の場合は突然死したりすることがあるので、現代医療においては極めて重視される病気なのです。

 では、実際に発症する血栓症にはどのようなタイプがあるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。