「選ぼう。あなたに合った投資信託がある」──。昨年12月下旬、フィデリティ投信が日本経済新聞の朝刊で、そううたった全面広告を展開した。興味深いのは、続く広告下段に示された「(分配せずに再投資する)『資産成長型』か(頻繁に分配金を出す)『分配型』か」という消費者への問い掛けだ。
さらに、その傍らには「分配金の使い道」と題したアンケート結果を示し、回答内容を示す四つの棒グラフのうち、最多の「将来のための貯金」(52.8%)を色付きで強調(図参照)。「長期投資が目的であれば、本来は資産成長型のほうがより高い運用成果を期待できたかもしれません」などの説明が続いている。
投信業界に詳しいある運用会社幹部は、この広告を目にした際、「いかにも意味深」と感じたという。なぜなら、俎上に載せた毎月分配型投信はこのところ、資金流出の苦境に見舞われているからだ。
振り返ると約20年前に日本初の毎月分配型が登場して以降、年金が偶数月しか入らない高齢者にとって月々お金が振り込まれる安心感や、退職者の生活費充当などのニーズを集め隆盛を極めてきた。
だがその実態は、多くの投信で月々の分配額が運用益を上回る、いわゆる「たこ足配当」だ。にもかかわらず、人気にあやかる金融機関は売れ筋テーマを冠した毎月分配型を続々投入してきた。