この定義は、国の社会保障制度改革国民会議(会長・慶応大学清家篤教授)が2013年9月にまとめた報告書で著された。翌年成立した医療介護総合確保推進法に地域包括ケアは明記され、法的な裏付けを得る。その具体策として、在宅医療の推進や保険者としての市町村の権限強化、特養入居者の中重度者特化などが盛り込まれた。

 いずれも「医療から介護へ」「病院・施設から地域・在宅へ」「治す医療から支える医療へ」という同報告書の提言に沿うものだ。

 同国民会議に先立ち、地域包括ケアの実践提案を目指して厚労省に「地域包括ケア研究会」(座長・田中滋慶應義塾大学大学院教授)がスタートしたのは2008年であった。同会は昨年3月までに6回の報告書をまとめ、改訂を繰り返してきた。

 その変遷を辿ると、地域包括ケアへの関係者の思い入れや関連業界との摩擦などがよく分かる。同研究会が「進化」と位置付ける以上の複雑な歩みである。初期の報告書からは理想に燃える意気込みが感じられ、次第に現実論へ舵を切る姿が一目瞭然である。掲げられた当初の理念を思い起こすためにも、振り返り作業が必要だろう。

「住宅」の重要性を加えた意義

 2009年3月に発表された第1回報告書では居住環境の重要性を指摘し、「高齢者介護研究会」では検討されていなかった「住宅サービス」を新たに加えた。「個人が尊厳ある生活を地域の中で送るためには、居住環境が整備された住宅を個人が選択できることが大切」と記す。日本の行政システムを考えると画期的な提案である。

 というのも、住宅は国交省の管轄である。縦割り意識の強い霞が関で、他の省庁の「領土」に手を出すのは禁じ手である。その因習を乗り越え、住宅を5つの要素の一つとして確立させた意義は大きい。

 欧州では古くから「福祉は住宅に始まり、住宅で終わる」と言われ、住宅政策は基本的人権に関わるとされ「公」の性格が強い。やっと日本でも住宅を高齢者ケアの柱とする意識転換が起きた。