熊本悦明(くまもと よしあき) メンズヘルスクリニック東京名誉院長。日本Men's Health(メンズヘルス)医学会名誉理事長。日本抗加齢医学会顧問。医学博士。1929年、東京生まれ。東京大学医学部卒業後、同泌尿器科学講座講師を経て、University of California, Los Angeles(UCLA)に留学。帰国後、68年に札幌医科大学医学部泌尿器科学講座主任教授に就任。男性医学・泌尿器科外科学・尿路性器感染症学を中心に研究を行っている。著書に『アダムとイヴの科学』(光文社)、『男はなぜ女より短命か』(実業之日本社)、『さあ立ちあがれ男たちよ! 老後を捨てて、未来を生きる』(幻冬舎)など。日本メンズヘルス医学会名誉理事長、札幌医科大学医学部名誉教授、メンズヘルスクリニック東京名誉院長、財団法人性の健康医学財団名誉会頭、日本臨床男性医学研究所所長、オルソ・マキシマス オルソクリニック銀座名誉院長。

 診断は主に、問診、血液検査による血液中のフリーテストステロン値(総テストステロンの2~3%で、加齢とともに減少する)の測定などで行います。ただし、保険適用でできる検査は限られており、より正確な診断を行い、治療の精度を高めるにはDHEA値の検査なども必要となります。

 治療方針は検査結果に応じて決めます。フリーテストステロン値が10pg/mL未満の場合、ホルモン補充療法(テストステロン補充療法)を実施します。塗り薬や貼り薬などの選択肢もありますが、日本で保険適用されるのは注射のみです。なお、テストステロン値を上昇させるために、少なくとも初期段階では注射の投与が必要であると経験的に信じています。

 治療初期には多くの場合、テストステロン製剤を2週間に1回のペースで投与します。1週間に1回のペースでの投与が望ましい場合もありますが、自費診療となります。症状は半年程度で改善することが多いので、その後は月に1回のペースに切り替え、症状を見ながら投与の間隔や量を調整します。副作用としては多血症などが挙げられます。

 なお、前立腺がん発症のリスクがあると言われていますが、そのような報告はありません。ただし、PSA(前立腺癌の指標となる数値)を定期的に検査しながら治療を行います。テストステロン補充療法の他にも、睡眠障害のある方が多い方にはメラトニン、勃起障害の改善が見られなければシアリスなどのPDE5阻害剤を投与します。

「人生50年」と言われていた時代は、更年期に続くのは単なる余生だと考えられていました。しかし医学の進歩により、今や人生80年時代となり、更年期後さらに30~40年人生は続きます。

 生活習慣病対策として、食事や運動などを気にかける人は増えてきましたが、一番大切な元気の源とも言える「テストステロン」に注目する人はまだ多くありません。テストステロンは、自動車のエンジンオイルのようなものです。身体の機能維持に不可欠で、少なくなったら補充しないと不具合が生じます。メガネや入れ歯と同じように、かけている部分を補うのが健康長寿医学なのです。

「『面倒くさい』がなくなった」。「夕方疲れなくなってきた」。更年期障害や熟年期障害の治療をして症状が改善した患者さんは口を揃えてそう言います。テストステロンレベルを上げ、エンジンオイルを満たすことで、元気さを取り戻すだけでなく、内臓脂肪が減少し、筋肉も増えてきます。生きるためのエンジンオイル「テストステロン」にも気を配り、活力あふれた健康長寿を実現しましょう。

(取材・構成/東 竜子)