シリコンバレー型の事業創造は「メディチ家とミケランジェロ」の関係現代のVCとスタートアップの関係ともいえるメディチ家とミケランジェロ。写真はメディチ家礼拝堂にあるミケランジェロ作の彫刻

 ある仮想通貨のスタートアップでは、社員のパーティーで、1本何万円もするドンペリニヨンのシャンパンを湯水のように振る舞う場面がある。また、瀟洒(しょうしゃ)なオフィスに入居し、社員の福利厚生の一環として無料のランチや無料の送迎などが付くスタートアップも少なくない。

 今、シリコンバレーは空前のベンチャーブームが起きている。ここ3年、全米のベンチャー投資額は、日本の約1500億円に対して6兆円規模を維持している。そのため「シリコンバレーの活況はバブルではないか」と尋ねられることが増えた。

 フィンテック(ファイナンス+テクノロジー)を例に見てみよう。われわれの調査では、シリコンバレーだけでフィンテック企業が1000社以上あり、その総資金調達額は5000億円以上と推定される。毎日3社のスタートアップが生まれ、1日当たり15億円余りのベンチャー投資が動いている計算になる。

 確かに、立ち上がったばかりのスタートアップに潤沢な資金が集まっていることが分かる。企業側に爪に火をともすようにして事業を行う様子がないことから、不可解に感じることであろう。

 だが、果たしてこれはバブルなのだろうか。「バブリー」というのは事実だが、私はバブルではないと考えている。