「全く“ノーマーク”の人物だった」。航空業界関係者がこう一様に驚くのが、日本航空(JAL)のトップ交代だ。4月1日から社長に昇格するのは、赤坂祐二常務執行役員(56歳)。入社以来、整備部門一筋で、現在は4000人の整備士が所属するグループ会社、JALエンジニアリングの社長も兼務する。
実はJALのトップ交代は昨年の同時期もうわさされていた。破綻を機に国から大型投資を制限されていた期間が終わり、新しい経営計画を発表。再建の立役者である植木義晴社長が就任6年目を迎えることで、体制を一新する材料が出そろっていたからだ。そうした中で次期社長候補に挙がっていたのは販売畑の藤田直志副社長や、路線統括の菊山英樹専務など。赤坂氏は、次期社長レースにおいては、あまり目立たない存在だった。
そんな赤坂氏が抜てきされた理由は何か。まず「現場出身」であることだ。植木社長は会見にて「経営の中枢に現場経験者が一人はいてほしい。でないと航空会社の神髄が分からない」と述べ、一方の赤坂氏も「日々変わるオペレーションに全力で対処してきた。おかげで瞬発力や粘り強さは、かなり鍛え上げられたと思う」と現場で培った強みを自己分析した。
JALが弱体化した要因に社内の人事抗争があるが、破綻後は整備出身の大西賢会長、パイロット出身の植木社長と現場出身のトップが続いている。こうした流れは「昔みたいに派閥争いとか、営業と人事のたすき掛けとかじゃなく、現場に実直な人こそJALのトップにふさわしい」という意思表明だと、あるJAL幹部は説く。