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イノベーションを起こせる人材は
どこにいて、なにを欲しがっているのか

内山悟志 [ITR代表取締役/プリンシパル・アナリスト]
【第77回】 2018年2月9日
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人材の確保と育成における選択肢

 スキルが不足する部分は、内部人材を育成するか、社内外から採用・確保する必要がある。社内外からの確保には、外部からの中途採用と社内事業部門・企画部門からの配置転換などいくつかの選択肢が存在する(図3)

 現在、デジタルイノベーションを積極的に推進する大手企業は、ITベンダーや同業・異業種他社からの中途採用に注力する動きを見せており、今後IT技術者の争奪戦が激化することが予想される。外部からCDO(Chief Digital Officer)を招聘し、プロデューサーの役割を担わせるような動きももられる。一方、優秀な人材を外部から採用しようとしても、従来の人事評価制度や報酬の考え方が障害となる場合もあるだろう。また、運よく採用できたとしても、企業風土や制度が整わない状況では、そのような人材が十分に活躍できないという事態も起こりうる。

 外部だけでなく、社内の事業部門や企画部門の中にも、何らかの教育や訓練を施せばイノベーション人材となりうる候補者が埋もれていることも多いので、その選択肢も見逃さないようにしたい。

 一方、既存のIT部門やグループIT子会社のスタッフがイノベーション人材となるように育成する取り組みも活発化しつつある。前に述べたように、従来のIT人材が保有するスキルや経験がイノベーションの創出や推進に活用できる場面はある。こうした強みを活かしつつ、新たな方法論や技術を取り入れていく挑戦意欲を掻き立てることがポイントとなるだろう。IT部門は、今後3~5年で従来型IT人材とイノベーション人材の比率をどの程度にしていくのかの方針を定め、目標を持って人材育成に臨むことが求められる。

 デジタルイノベーションに向けた体制構築や環境整備は一朝一夕には実現できない。本稿で主に述べた人材に関する変革だけでなく、全社的な意識改革、社内制度や権限規定などの変更なども行っていかなければならない。イノベーションは誰かに指示されて起こすものではなく、変革への意思を持った人の自発的な行動から生まれるものである。やらない理由やできない理由は社内にいくらでも転がっていることだろう。

 だが、すべてお膳立てが整わなければ何も始められないという人は、そもそもイノベーションには向いていない。最初に自発的行動を起こす人は、棘の道を開拓しながら進むことになるだろう。企業は、こうした人の孤軍奮闘の努力を無駄にしないよう、立ちふさがる問題を解決し、環境を整えていくことが求められる。

 また、IT部門の意識変革も重要な要素であることを付け加えておきたい。クラウドシフトが進行する中、いかなる業界においても3~5年後のIT部門のミッションには、必ずデジタルイノベーションの推進または支援が含まれていることを念頭に置いた組織づくりが求められる。

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内山悟志
[ITR会長/エグゼクティブ・アナリスト]

うちやま・さとし/大手外資系企業の情報システム部門などを経て、1989年からデータクエスト・ジャパンでIT分野のシニア・アナリストととして国内外の主要ベンダーの戦略策定に参画。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し、代表取締役に就任。2019年2月より現職。


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日々進化するIT技術をどうやって経営にいかしていくか。この課題を、独立系ITアナリストが事例を交えて再検証する。クラウド、セキュリティ、仮想化、ビッグデータ、デジタルマーケティング、グローバル業務基盤…。毎回テーマを決め、技術視点でなく経営者の視点で解き明かす。

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