デキる人は「業績目標」でなく
「学習目標」を掲げる

 このように達成目標には2種類があるわけだが、仕事でも勉強でも、デキる人は「学習目標」を持つことが多い。

 B君が即効性のあるテクニックばかりを求めたのは、「業績目標を持つ」タイプだからである。そこでは即効性が求められ、学びが「こんな場面ではこうすればいい」というように具体的状況に結びつきすぎているため、現実の様々な場面で応用が利かず、伸び悩んでしまうのである。

 一方、C君が営業の理論的背景を理解したがったり、関連する知識や理論を広く学ぼうとしたりするのは、「学習目標を持つ」タイプだからである。そこでは広く深く学ぼうとするため、応用が利く知識や理論を積極的に吸収でき、初めのうちはノルマを達成できなくても、知識や理論を広く深く身につけていくうちに急激に伸びていったのである。

伸びる社員が「目先の成果」にこだわらない理由本連載の著者・榎本博明さんの
『モチベーションの新法則』
が好評発売中!
日本経済新聞出版社、860円(税別)
最新の知見に基づいたモチベーションアップのヒントが満載!
人事労務に携わっている方、チームリーダーの仕事をされている方、自らのモチベーションアップに取り組みたい方は必読です!

 このように学習目標を持つことが仕事力の向上につながっていく。

 さらに、学習目標を持つ場合は、能力に自信があってもなくても、熟達志向の行動が取れるというメリットがある。

 つまり、困難な事態に直面しても、まだ未熟で能力に自信がない時でも、それを学習の機会ととらえて、失敗を怖れずに積極的にチャレンジし続けるところがポイントである。

 失敗した時や苦しい状況に置かれた時も、周囲からの評価を気にする「業績目標を持つ」タイプと違って、「学習目標を持つ」タイプは、そこからも何か学ぼうという意欲を持って取り組む。実際、多くの研究結果が学習目標の有効性を示している。

「業績目標を持つ」タイプは、失敗して評価が下がるのを怖れるため、自信のある場面以外では気持ちが委縮し、チャレンジできない。

 したがって、B君が伸び悩みがちで、C君が成長軌道に乗っていったのは、達成目標の種類が違うせいだったのだ。

 こうして見ると、部下を育てるといった観点からすれば、業績目標ではなく、学習目標を持つように促すことが大切だといえる。

 学習目標を促すためには、課題を与える際に結果よりも熟達度を意識させるような声がけをするように留意しなくてはならない。もしあなたの部下がB君のように周囲からの評価を気にして結果にこだわるタイプだったら、無意識のうちに持っている業績目標を学習目標に変えていけるような声がけを心がけてほしい。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。

(心理学博士、MP人間科学研究所代表 榎本博明)