この連載でも紹介したが、英・オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が論文で「今後10~20年で47%の仕事が機械に取って代わられる高いリスクがある」と発表し、世界的な反響となったように、今後は人工知能・ロボットの発達で、従来の工場で大量生産するための労働者は必要なくなっていく。

 これに対して、例えばドイツでは、人件費のかからない次世代ロボットに工場の製造ラインや物流の現場を任せる「考える工場」を産学官共同の国家プロジェクトとして研究している。重要なことは、ドイツではこれを新たな「雇用創出」の好機と捉えていることだ。

「考える工場」が実現すれば、製造業が新興国から回帰し、高付加価値の雇用「製品設計」「工程管理」「製品の販売」「マーケティング」などが新たに創出できると考えているのだ(第113回)。そして、ドイツの労働組合も、従来の大量生産型の労働者の雇用が失われると反対するのではなく、むしろ「考える工場」の導入に積極的に協力する姿勢を示しているというのだ。

 日本の国会で「裁量労働制」が議論される際、人工知能・ロボットの時代に雇用制度がどうあるべきかという話は全く出てこないのは問題ではないだろうか。ただ、現在の「大量生産型の雇用制度」を大前提にして、労働時間が長くなるとか短くなるとかばかり議論しているが、全く不毛な議論だと断ぜざるを得ない。

「裁量労働制」を否定することは
「女性の社会進出」を遅らせることになる

「裁量労働制」を巡る議論で、もう1つ気になることがある。それは、安倍政権の重要政策の1つであるはずの、「女性の社会進出」と絡めた議論が全くないことだ。野党が主張するように、裁量労働制は全てダメということになると、日本の「女性の社会進出」は、また遅れると思うのだ。

 日本の「女性の社会進出」の問題は、基本的に大学卒業後、会社に入りにくいということではない。日本独特の新卒一括採用で、どこの国よりも多くの大卒が会社に入れる(第97回)。むしろ問題は、組織の経営者や幹部を務める女性が世界的に見て極端に少ないことだ。

 どうして世界第3位の経済大国で、こんなことが起きるかといえば、「日本型雇用システム」で、年功序列・終身雇用で組織の幹部を育成するシステムだからだ。このシステムでは、途中で結婚、出産で組織を離れる女性は幹部になれない。そもそも、途中で辞める可能性が高い女性には、入社時から重要な仕事は任せないという組織が多いのだ。