◆老後のお金の不安と向き合う
◇公的年金保険は破たんしない

 現在、年金について、さまざまな俗説が世間にあふれている。例えば、「公的年金保険は破たんする」「将来年金がもらえないようになる」といった内容だ。これに対し、出口氏は「日本の公的年金保険は破たんしない」という。

 日本の税収は年間で約58兆円(2016年度)であるのに対して、歳出は約97兆円である。税収よりも多くのお金が使えるのは、国債を発行してお金を調達しているからだ。国債が発行できれば、公的年金保険が破たんすることはない。

 一方、国債の買い手がいなくなったとき、財政は破たんする。日本では国債の多くを銀行、証券会社、保険会社などの金融機関が保有している。仮に日本政府が債務不履行を宣言して、国債が紙くずになったとしたら、政府が倒れる前に国債を抱えている金融機関は全部破たんする。これは国よりも安全な金融機関はないことを意味する。出口氏は、国が潰れたら、公的年金保険どころの問題ではないため、悩んでいても仕方がないという。

◇年金の改革

「老後破産」や「下流老人」などの言葉は、国民年金保険をベースに考えた議論にすぎない。

 出口氏は、パートやアルバイトを含む非正規雇用者の社会保険の適用拡大をして、パートやアルバイトでも厚生年金保険に移行すれば、この問題は収束するという。社会保険の適用拡大の効用として次の3つが挙げられる。

 1つ目は、年金財政が安定することだ。厚生労働省の財政検証のオプション試算(2014年)では、賃金月額5.8万円以上のすべての被用者に適用を拡大した場合、約1200万人が厚生年金保険に移ることになる。結果、年金財政が大きく改善するという。

 2つ目は、社会保険のセーフティネットとしての機能が向上することだ。パートやアルバイトでも厚生年金保険の備えがあれば、思い切って転職ができる。これが労働の流動化につながる。

 3つ目は、3号被保険者(会社員や公務員の配偶者で、年収が130万円未満の人)の問題が解決されることだ。3号被保険者については、配偶者が保険料を支払っていれば自分が払わなくても年金を受給できるという不公平性が問題視されている。今は専業主婦の多くがパートで働いているため、正規・非正規にかかわらず、全員厚生年金保険に移行すればよい。

 加えて、竹中氏は、年金の改革は若い世代も含めたセーフティネットの根本改革と一緒にやってはじめて意味があるという。具体的には、給付付き税額控除(税額控除と手当給付を組み合わせた制度)をあわせて、最低所得保障をすることだ。

 現在は、少しでも働くと生活保護が減らされてしまう。本来、最低所得が保障されていて、働くほど所得が増えていくのが望ましい。一定の収入がない人は税金を納めず給付金を受けとり、一定の収入を超えるとそれに応じた税金を支払う。こうした考えが究極のセーフティネットになると竹中氏は考えている。