裁量労働制を導入しても
労働時間は変化しない

 裁量労働制を新たに導入するにあたり、必ずといっていいほど社員から聞かれたことが、「実際に働いた時間にかかわらず、あらかじめ定めた時間働いたとみなすということは、あらかじめ定めた時間が9時間だったとすれば、1日1分働いても、1日9時間働いても、同じ給与が払われるのか」という意味の質問だ。

 裁量労働制導入後は、労働時間に関係なく同じ給与が払われる。しかも労働時間は社員の裁量に任されているのだから、労働時間を短くしてもいいんじゃないか――そんな風に考えるのかもしれない。

 しかし、そのような心理が働く人は、裁量労働の対象にならない。なぜなら、専門性があったり、特定の企画業務に従事したりしている人材で、企業の中核にある人々が対象者だからだ。そういった人たちは、労働時間を短くできればそれでいい、という考え方はあまりしないものだ。

 実際に前段の質問をした人は、その日の業務量に応じて勤務時間の長短に、よりメリハリがついたという傾向はあったが、全体で見れば労働時間が短くはならなかった。

 ただ厳密に言えば、裁量労働制の導入で、人によって多少は労働時間の増減が出てくる場合がある。

 例えば、公私のバランスをとりたい、安定的に仕事をしたいという考え方の人は、より短めな労働時間になる傾向がある。一方、貪欲にチャレンジしていきたい、責任ある仕事をしたいというタイプの人は、少し長めな労働時間になる傾向がある。

 私は前者を「調和志向」、後者を「牽引志向」と名付けた。私が実施している演習プログラムに参加した約1000人のデータでは、日本のビジネスパーソンは牽引志向が51%、調和志向が49%だ。つまり、裁量労働制を導入して労働時間が少し短縮される人と、少し増える人の割合が、日本企業では半々なのだ。従って、会社全体で見れば労働時間の増減には影響しないと、私は見ている。