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シリコンバレーで考える 安藤茂彌

東大9月入学論議はコップの中の嵐
問われるべきは教育の密度だ

安藤茂彌 [トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]
【第54回】 2012年2月22日
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 日本の大学生は勉強しない。中央教育審議会の資料によると、日本の大学生の勉強時間はアメリカの大学生の半分と見ている。高校の格差の上に大学での密度の差が加わって、米国大学院への願書提出が少なくなっているとしたら由々しき問題である。若い世代の人材の乏しさが日本の国力を左右するのは間違いない。日本の将来を考えると背筋が寒くなる。

 東大が入学を9月にずらすのに反対ではない。要は教育の中身である。東大は「グローバルに見て魅力のある大学」なのだろうか。外国人が「東大を卒業したことを誇れる大学」なのだろうか。「東大を卒業したらグローバルに就職に有利」なのだろうか。こうした検証なしに、9月入学にずらすのは「小手先」の演出でしかない。東大は中身をどのようにして充実させるのだろうか。

 欧米の大学では授業のオープン化が進んでおり、インターネット上で授業内容を見られる。MITは2001年からインターネット上ですべての授業が見えるようにした。こうすれば新入生は入学前から、どのような授業を受けられるかが分かる。東大では授業の公開はごく僅かしか行われていない。英語だけで学位が取れるコースが9コース新設され、英語での授業も30コースあるようだが、この比重を上げていくことは欧米からの留学生を増やすには必須である。

世界中の大学が避けては通れない
履修単位の国際互換と授業レベルの問題

 さらに大きな問題がある。それは単位の互換性である。外国人留学生が東大に留学してきたものの、何らかの事情で母国に帰らなくなった場合に、東大で取った単位を母国の大学に移行できるシステムになっているのか。これは留学生にとっては重大な関心事である。

 そのためには東大の履修科目と海外の大学の履修科目が同等の単位で換算されなければならない。たとえば、東大の東洋史の講義は、ハーバード大学の東洋史の講義と互換性があるようにしなければならない。授業内容が極めて近く、同等の単位にとみなす作業をナンバリング(Numbering)と呼ぶ。アメリカ国内と欧州内ではナンバリングに熱心である。東大がこれを実施するには、授業内容をグローバルなレベルで摺り合わせなければならない。

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安藤茂彌
[トランス・パシフィック・ベンチャーズ社CEO、鹿児島大学特任教授]

1945年東京生まれ。東京大学法学部卒業後、三菱銀行入行。マサチューセッツ工科大学経営学大学院修士号取得。96年、横浜支店長を最後に同行を退職し渡米。シリコンバレーにてトランス・パシフィック・ベンチャーズ社を設立。米国ベンチャービジネスの最新情報を日本企業に提供するサービス「VentureAccess」を行っている。VentureAccessホームページ

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シリコンバレーで日本企業向けに米国ハイテクベンチャー情報を提供するビジネスを行なう日々の中で、「日本の変革」「アメリカ文化」など幅広いテーマについて考察する。

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