「胆力で聴衆を呑む」という力を失った現代の政治家と経営者2010年のダボス会議で講演するサルコジ・フランス大統領 Photo:REUTERS/AFLO

拙著、『知性を磨く』(光文社新書)では、21世紀には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という7つのレベルの知性を垂直統合した人材が、「21世紀の変革リーダー」として活躍することを述べた。この第41回の講義では、「技術」に焦点を当て、拙著、『ダボス会議に見る世界のトップリーダーの話術』(東洋経済新報社)において述べたテーマを取り上げよう。

一瞬で場を制したサルコジ・フランス大統領

 2010年のダボス会議でのことである。

 ある話者が、プレナリー・セッションの檀上でスピーチをしていたが、その話を聴きながら、筆者は、こう感じていた。

「この聴衆の前で、こんな話をしていいのか」
「聴衆は、内心、相当な反発を感じているのではないか」

 しかし、筆者がそう感じた瞬間、何が起こったか。

 この話者は、話術における「究極の力量」と呼ぶべきものを使った。そして、場の雰囲気を制した。

 それは、「胆力」と呼ばれる力。

 いまや、日本においては「死語」となりつつある言葉であるが、この話者は、その「胆力」によって、ダボス会議の場を制した。