ちなみにコホート調査とは、一人ひとりの体質と生活習慣・環境がいかに病気の発症と関連するかを明らかにするための研究方法の一つだ。

病人の遺伝子だけでは
どれが怪しいかは分からない

 こうして、2012年、『東北大学 東北メディカル・メガバンク機構』が誕生。翌年から、血液や尿等生体試料の採取をともなう、地域住民に対する「コホート調査」と、妊婦を中心とする「三世代コホート調査」を実施してきた。

 調査の目標人数は15万人。対象地域と定めた宮城県と岩手県の全人口のおよそ4%にあたる。バスに乗ったら1人か2人は、コホート調査に協力した人がいる計算だという。2016年11月、開始から3年半で、目標は達成された。

 さらに調査と並行して2013年11月には日本で初めて1000人分の全ゲノム解析を完了。現在は、すでに2000人以上の全ゲノムデータをもとにした情報をネット上で公開している。

 同機構が構築しようとしているのは「日本人の全ゲノムリファレンスパネル」。病気を発症した人ではなく、健康な人たちを調べた全遺伝子情報のデータベースだ。

 ある病気の原因が特定の遺伝子の変異によるものか否かを調べる場合、患者の遺伝子だけでは、どの遺伝子が怪しいのかを調べることはできない。患者と健康な人、両方の遺伝子情報を比較することで初めて見当がつく。全ゲノムリファレンスパネルは、健康状態や病気に遺伝子がどう関係しているのかを研究するための非常に有益な情報なのである。

 同機構のデータは、公開されているものとしては、質・量ともに世界トップレベル。筆者の周囲の医療関係者には「世界一」と称賛する声もあり、日本のゲノム医療に画期的な発展をもたらすことが期待されている。

「例えばがんの薬には、あるタイプの人には非常に効果があるけれど、別のタイプの人には効果がないものがあります。不思議なことではありません。人間はひとり一人が違っているからです。これからは、そうした各自の体質・遺伝子に則した医療を行う時代。我々は、メディカル・メガバンクによって、そうした未来型医療の実現に貢献したいと考えています」