趣味が高じて
日中のオタクを研究課題に

 日本で勉学に励む間も、アニメは欠かさず観ていた。それどころか、オタク熱はますますヒートアップしていったという。

「中国にいた時からその傾向はあったのですが、BL(ボーイズラブ)にどっぷりハマって、日本にいる間に立派な“腐女子”になってしまいました。あ、でもBLそのものを描いた作品はあまり好きではなくて、基本は「少年ジャンプ」なんかの漫画をベースに、自分でいろいろ想像を膨らませています。公式でBLされると、2次創作でやることがなくなってしまうんですよね」

 鄭さんは、好きなキャラクターのグッズを集めるために、秋葉原の飲食店でアルバイトをしている。部屋は壁一面、アニメキャラのポスターで埋め尽くされ、棚やテーブルの上には、お気に入りのフィギュアを並べた“祭壇”や、コラボカフェで買った限定グッズなどが飾られている。

 また、休日の旅行ではお気に入りのキャラのぬいぐるみと一緒に旅行に行き、旅先の風景とともにぬいぐるみを写真に収めるのだという。ただし、好きな作品のグッズやDVDを集めることには血道を上げても、コミックマーケットなどに足を運ぶことはない。「コミケは“にわか”(にわかファンのこと)も多いから馴染めない」のだという。

 そんな鄭さんは、趣味が高じて、現在の博士課程では日中間の“オタク”の比較研究をしている。

「もちろん、個人の趣味嗜好もあるので一概には言えませんが、日本人のオタクの中にはグッズを買って、そのコンテンツや“推しキャラ”を支える、という意識の人も結構多い。日本ではグッズはひとつの市場として成立していて、それ自体がエンターテインメント化していますよね。中国人だとその感覚はわかりにくいし、中国国内ではゲーセンに行って好きなキャラのカードを漁ったり、バイトの帰りにアニメイトに行ったり、同じ趣味の友だちとコラボカフェで食事をしたり、という遊び方はなかなかできません」

 鄭さんによると、日本のオタクはグッズを買うなど、好きなアニメの周辺市場にもじゃんじゃんお金を落とす。一方、中国ではオタクが大金を散財するという構図になりにくいのだという。

「中国のオタクだと、好きなアニメの作品そのものを楽しむことに加えて、どれだけ自分が“日本の文化に詳しいか”も重要なポイントになっていて、それが中国人オタク同士のマウンティングにも使われたりします。そのため、日本語教室や茶道体験など、“日本らしさ”を体得するためにお金を使う、という人も多いですね」

 ちなみに鄭さんは、好きなアニメ作品のDVDが出たら、しっかり購入して“お布施”をすることも忘れない。彼女いわく「私はとにかく好きなキャラに“貢ぎたい”派。中国人にしては珍しいタイプかもしれません」とのこと。