売り上げの半分以上を海外で占めるカシオ計算機は、基幹系システムの標準化と効率化を進める一方で、売り上げに直結する営業やマーケティングのグローバルなIT整備を進めている。同社が描くシステムの全体像や、グローバルIT戦略について、IT戦略を担う業務開発部長の矢澤篤志氏に聞いた。
「ノンコア」領域では徹底した標準化と統合化、
「コア」領域では差別化を追求
――カシオ計算機では、IT投資についてどのような考え方で進めていますか?
製造業は非常に「コスト」に対する考え方が厳しい業種です。一般的に売上高に対するITコストは1.3~1.4%の企業が多いと言われていますが、私たちも「常に売上高に対するITコスト比率が上がらないように」という考え方で運営しています。しかしながらどこが適正であるかを見極めるのは非常に難しいですね。
実際には、2001年には連結売上比で1.6%だったものをIT部門の構造改革などを実行し徐々に削減し、一時は0.95%にまで低減してきました。しかしながらリーマンショック以降、事業の選択と集中を行い、携帯事業やデバイス事業をグループから切り離したために分母となる売上高が減り、ITコストの比率が1%を超えるようになりました。現在は1.09%です。一概に、この数値が適正かどうかは言いにくい。
特に既にシステム化されている業務領域において、新規に投資されたITが何年後にどれくらい利益貢献できるかを算出するのは非常に難しい。それらは既存システムを置き換えの際に、現状のコスト負担の水準を上げないようにしながら、ビジネスに貢献できるシステムに変えていくことが求められますね。
IT戦略の考え方は非常にシンプルです。まず、全体を「コア」と「ノンコア」に分けて考えています。
基幹系を中心とした会計や購買、人事、調達・物流などは、カシオの競争力の源泉となるわけではない「ノンコア」領域です。こうしたバックヤード業務にカシオ独自のシステムを追求しても意味がありません。徹底的に標準化と統合化を進め、コスト効率と変化への対応力を追求しています。ERPも1990年代後半に導入し、グローバル標準化を進めてきました。