「雇用が財産」ではなく「キャリアが財産」
ここで、参考になる考え方をひとつご紹介したいと思います。法政大学の諏訪康雄教授が唱える「キャリア権」という考え方です。従来の日本では、労働者のキャリアに対する企業の影響には大きいものがありました。人事異動から能力開発にいたるまで、企業が丸抱えで対応をしてきたのです。
労働者は、その企業の意向にしたがって懸命に働いてきました。企業は、その懸命な努力に応えるべく終身雇用を方針として掲げてきました。こうしたあり方は、「雇用が財産」と表現することができます。
しかしキャリア権では「雇用が財産」ではなく、「キャリアが財産」と考えます。不確実性が増し、環境変化のスピードが速まる時代において、いくら企業が終身雇用を保証したくとも、事業自体がM&Aなどで売却されてしまうかもしれません。そうした前提に立てば、1社での終身雇用に固執するのではなく、自分の専門性を高め、自分自身のキャリアそのものを財産と考えたほうが個人の戦略としても妥当なわけです(もちろん、結果的に生涯1社の勤務で終わったとしても、それは素晴らしいことでしょう)。
自分自身のキャリアを財産とする以上、他責的な態度ではキャリアを形成できません。本人が自発的にキャリアを形成していく必要があります。また、何も方向性がなければ、キャリアは拡散してしまうでしょう。
ですから明確な軸を持ち、方向性を持って専門性を高めていく必要があります。さらに環境変化が激しい時代ですから、成長を止めることはできません。常に成長していく必要があります。
このようにキャリア権は、成功法則に非常にあてはまり、また、なぜ成功法則が有効なのかという理由を解き明かす考え方であるわけです。