「転職のリスク」は、転職先の会社ごとに異なります。ですから、できるだけ個別のリスクの内容を把握する、そのための事前の情報収集をする、ということが大事です。とはいえ、リスクにはある程度、共通するものもあります。そこで、今回は、有名大企業、新興企業・外資系という分類で、共通するリスクについて考えてみたいと思います。
有名大企業の場合、中途採用の本気度を見よう
転職率は、企業の規模によって大きく異なります。株式会社リクルートと株式会社リクルートエージェントの第6回転職市場定点観測調査によれば、37歳時点において20-49人の企業規模での転職経験者比率が80%を超えているのに対し、5000人以上では40%を下回っており、また1万人以上では約30%、2万人以上では約20%の比率になっているのです。つまり、大企業であればあるほど、転職者の比率は少ないのです。
有名大企業であっても、いまやまったく中途採用を行なわないという企業は珍しくなっています。しかし中途採用の実態には、バラツキがあると思われます。キャリア採用は補完程度にすぎず、あくまで新卒採用を人材の中心に据えていく方針の会社では、新卒採用された「生え抜き」の比率が高く、文化の同質性も高いので、その同質性に馴染んでいくにはそれなりの努力が必要になるでしょう。
会社方言を知らないことで、部下に甘く見られる
こうした同質性で苦労するという点は、実は日常の些細なところにあらわれてきます。有名大企業各社の人事部長に聞きますと、転職者が組織文化に馴染むにあたり最も苦労する点は、会社方言だそうです。
会社方言とは何でしょうか。要は、その会社だけに通用するビジネス用語のことです。ただ会社方言が特徴的なのは、他の会社ではまったく別の言い方をするのに、なぜかその会社の中だけではその会社独特の言い方をしてしまうところにあります。面白いもので、当のその会社の社員たちは、その会社にしか通用しない表現にもかかわらず、共通表現と思い込んでいるのです。
転職者にとって、会社方言は入社するまで知る由もありません。ですから入社して、その存在に苦労させられるのは当たり前のことなのです。しかし、その会社で長く勤務している部下の目から見ると、転職者は即戦力で優秀だから採用されたのに、こんな用語さえ知らないのかと嘲る気持ちが生じてきます。