これまでの連載で、転職ドリーマーの失敗パターン、転職の成功法則、そして転職のリスクを考えてきました。共通しているのは、明確な軸と自発性により、方向性を持って専門性を高めることが重要であることでした。最終回は、成長を継続する、方向性を持って専門性を高めるために必要なことを考えていきたいと思います。

転職市場のプロたちは人材の「ここ」を見ている

 キャリアコンサルタント、採用の人事担当者が共通して認めている「転職に有利な材料」「不利な材料」はあるのでしょうか。当たり前の話になってしまいますが、実は外面的な要素より、業務と実務の経験に基づく専門性の有無が最も重要なのです。それと同じくらい重要なのは内面的な要素で、ズバリ他責か自発的かということです。

 その証拠として、キャリア採用の際に主流となりつつある「行動面接」が挙げられます。これは、過去に行なってきた業務と実務の経験について、本人がどのような行動を取ったか、その理由は何か、そしてその結果の影響をどう認識しているかなどを具体的に詳しく聞く面接です。

 この行動面接の目的は、他責か、自発的かを見分けることができるところにあるのではないでしょうか。実際に取った行動、またその行動を取った理由を詳しく聞いていけば、かなりの確率で他責か自発的かを見分けることが可能です。

 つまり、転職市場のプロたちが人材を見るポイントは、専門性と自発性ということになります。そのためには、成長と明確な軸が求められるわけです。

転職するもよし、いまの会社に残ることも立派な決断

 筆者は、転職するとか、しないということは結果であって、明確な軸と自発性を持ち、成長を続けることができるのなら、それが最も重要なことではないかと思います。裏を返せば、転職の有無にかかわらず、方向性を持って専門性を高めることができない、成長が継続できないということが一番恐ろしいことなのではないでしょうか。

 実は、転職というリスクを冒さなくとも、成長を継続しないというリスクを冒している可能性はあるように思います。つまり、社内にいたまま他責的な傾向に陥って、なんの能力開発の努力もしない、自発的な仕事の取り組みをしないという状態です。